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2015年01月20日
今年は未年。干支に因んで作品を書こうと、子供の頃に習ってよく歌っていたし、確か英習字のお手本にもあったと思う Baa baa black sheep を思い出したのでした。

                 メエメエひつじさん (c)La plume d'oie 2015 作品部分


Baa baa black sheep はイギリスの古い子供向けの歌で、ナーサリーライムとかマザーグースとか呼ばれているもののひとつ。

Baa baa black sheep       メエメエ黒羊さん、
Have you any wool?       羊毛はありますか?
Yes,Sir, Yes,Sir,       はい、はい、ありますとも、
Three bags full:       いっぱい詰まった袋が三つ
One for the master,       ひとつはご主人様に
And one for the dame,   もうひとつは奥方様に
And one for the little boy    残りのひとつは路地向こうの少年に
Who lives down the lane.


しかし、新年なのに black つまり黒いのはなァと思っていたところ、他の言葉に置き換えられたりしていることを知りました。
実はこの歌、いろいろな解釈がありまして、黒い羊は黒人労働者、ご主人様は王様、奥方様は貴族、路地向こうの少年は一般庶民を指しているという節があり、13世紀後半には実際にwool tax 羊毛税なるものもイギリスにあったそうです。つまり、貧しい庶民にはどんなに働いても3分の1しか残らないという、ちょっと社会風刺的な内容なのです。
また、英語で black sheep というと厄介者という意味があり、昨今のさまざまな事情を踏まえて、当たり障りのない言葉に置き換える傾向なのだとか。そこで、black の代わりに Happy ハッピーな、 little 可愛い、rainbow 虹色の、などになっているそうな。

日本でも昔話の筋や童謡の歌詞が現代の事情に相応しくないと変わってしまったのがあるのと同様です。

と、いうわけで、新年だから Happy に置き換えて書くことにし、冒頭半分だけを作品にしました。


                   メエメエひつじさん 画像はクリックして拡大
                    (c)La plume d'oie 2015 
投稿日 2015年01月20日 23:37:59
最終更新日 2015年01月20日 23:37:59
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2015年02月20日
               no subject

投稿日 2015年02月20日 10:58:34
最終更新日 2015年02月26日 11:25:32
修正
2015年02月26日
話題になっていた銀座などでの春節のにぎわいをよそに、これ、どうやって書いたんだろうか?!と、このところ連日古い写本とにらめっこの鵞毛庵。それを書いたフランスの17世紀の書家の顔を憎々しげに眺めてはため息。

その書家とは、Louis Barbedorルイ・バルブドール(1589-1670)。ルイ13世と14世に仕えた宮廷お抱えの書家です。当時、ヨーロッパ中から世界で最も美しいと言われた書体のエクスパート。書に関する本も出版しており、そのRONDEロンド体と呼ばれる書体とそこから派生した書体は後々フランスの小学校で習う字の基礎になっています。
以前にもこちらの記事で触れましたが…


3月4日(水)〜10日(火)まで、日本橋の丸善で「世界の万年筆展」が開催されますが、それとタイアップして、3階のギャラリーではカリグラフィー展を行います。日本カリグラフィースクールの講師陣が出品、今年は特別講座からということで、フランスの17-18世紀の書体を担当している鵞毛庵も参加します。講座の内容に沿った作品をとのことで、展示作品制作のためにバルブドールとにらめっこなわけでした。

フランス17世紀の書体

The Art of Lettering 
日本カリグラフィースクール特別講座講師による カリグラフィー作品展
2015年3月4日(水)〜10日(火) 
丸善 日本橋 3階特設会場 9:30〜20:30  最終日は17:00閉場


羽根ペンの奥に覗いているのがその憎々しげな…
フランス17世紀の書体

投稿日 2015年02月26日 11:24:32
最終更新日 2015年02月26日 11:24:32
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2015年03月20日
研究であれ読書であれ、書物に没頭する人を「本の虫」といいますが、これは紙魚(しみ)が本の紙を食べる様子からこのように言われるようです。英語でもbookwormと言い、紙魚のことであり、本好きのことも指しています。 

ところが、フランスでは、紙魚はもちろんいますが、本好きのことは「図書館(書架)のネズミ」と呼ばれています。始終、図書館や図書室に出没しては本をむさぼり読む姿が、ちょろちょろ書架の陰を動き回るネズミを連想させるのでしょう。

さて、この時期、毎年恒例のBOOK展が催されます。今年はモノトーンとモザイクがテーマですが、上述のネズミにヒントを得たものやラ・フォンテーヌの寓話の動物が潜む蔵書票など新作とただいま格闘中です。



                 虫?それともネズミ?

BOOK ORCHESTRA Monotone-Mozaic

2015年4月1日〜26日 休廊 月曜日  11:00〜17:00
於 ギャラリーUSHIN 
所沢市小手指町1-22-13  最寄駅  西武池袋線 小手指駅 北口 徒歩5分
出展者 : 大野加奈 小野寺美樹 倉片友子 五木田摩耶 田村理江 松田富美子 

蔵書票の他、豆本、ブックカバー、栞をはじめ、アート&クラフトのほか、作家の田村理江さんがセレクトした本やお話会やワークショップなど

鵞毛庵はラ・フォンテーヌ寓話12話を上下2冊豆本に仕上げ、フランス装のカバーをかけるワンデイレッスンも行います。
4月18日、25日 両日とも14:00〜  ¥3,500(お茶付き)

展示期間中、蔵書票をお買い上げいただいた方には、お名前やイニシャルをカリグラフィーでお入れします。お気に入りの本、大切にしたい本の見返しにお貼りください。

本の虫や書架のネズミにはきっと楽しさ満載の企画展です。


           虫?それともネズミ? 
 ラ・フォンテーヌの寓話 カラスとキツネが潜んでいる蔵書票(Exlibris) (c)La plume d'oie2015
投稿日 2015年03月21日 1:31:07
最終更新日 2015年03月21日 1:31:07
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2015年04月20日
今日の東京は雨と強風で、穀雨には激しすぎ。穀雨とは二十四節気の六番目にあたり、穀物の成長を促すありがたい恵みの春の雨のはずなんですが...

こんな日は、できるならば家で読書三昧がいいやもしれません。


         図書館のネズミ     図書館のネズミ

本を運び出したり、読書に没頭したりと、ネズミさんたちが。



先月の記事ではまだ準備段階で紹介できなかった蔵書票の新作より、「図書館のネズミになりなさい」。本の虫のことをフランスでは図書館(書架)のネズミということからデザインしたもの。

図書館のネズミ

こちらは本の上で本を読んでいるネズミ。でも、花の近くに舞う蝶々にちょっと気を取られてます。 蝋画の技法を用いた作品。画像をクリックすると少し拡大します。

今回の展覧会のテーマであるモノトーンに合わせて、久しぶりに墨汁だけで仕上げたので、一見、版画のようですが、蝋を引いて、図柄を削って墨汁をかけ、最後に蝋を削り落とすという蝋画というものです。


蔵書票を貼ると、なんだかとても特別な本になって、ちょっとわくわくします。
是非、おためしあれ。
投稿日 2015年04月20日 17:03:10
最終更新日 2015年04月20日 17:03:10
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2015年05月20日
                   コウノトリ

今年の暦の5月に選んだラ・フォンテーヌの寓話は「キツネとコウノトリ」。イソップの原作も同じタイトルですが、日本ではキツネと鶴とかキツネと鶴の御馳走などとも。イソップの寓話のフランス版の著者ラ・フォンテーヌは17世紀の詩人なので、その時代に合わせたフランス特有のロンド体という書体で寓話の冒頭を書いています。

この寓話は、常日頃、キツネはコウノトリを、内心、変なカッコのやつだなぁと思っていたので、御馳走に招待すると言って、わざと食べにくいお皿で料理を出してからかおうとします。困ったコウノトリは、ぐっと我慢して冷静に対処。後日、今度はお礼にうちで、とキツネを招待し、首の細長い容器で御馳走を用意します。キツネはしてやられたわけですが、この寓話の教訓は、人を傷つけると自分も同じように傷つく。

コウノトリというと、赤ちゃんを運んでくるイメージが強いと思いますが、抱卵から子育てまで雄雌の共同作業という習性があり、コウノトリが巣を作る家は幸福を呼ぶなどとも言われて、ヨーロッパでは幸せのシンボルとされている鳥です。フランスのアルザス地方では屋根の上に巣が作りやすいように工夫もされています。

アジアでみられるコウノトリはくちばしが黒いですが、ヨーロッパのは朱いのが特徴。遠目には鶴とよく似ているし、日本では鶴の方が身近でなじみがあるのでしょう。
お祝い事や結婚式には欠かせない鶴。コウノトリも鶴も、どちらも良いイメージです。

投稿日 2015年05月29日 11:04:58
最終更新日 2015年05月29日 11:06:09
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2015年06月21日
雨降る頃の

今月のカレンダーの寓話は「牛になりたかったカエル」。
梅雨らしくなってきた東京ですが、近頃カエルみかけないですねぇ。
時折、早朝に車に轢かれたおぼしく哀れな姿をさらしていることも。

さて、この寓話、大きくて立派な牛をみかけたカエルが主人公。あんなふうに大きくカッコよくなりたい!と思い、お腹を一生懸命膨らませますが、まだまだと、どんどん膨らませた挙句に破裂してしまいました。

ラ・フォンテーヌ版ではカエルは妹も登場し、どうだい?という兄ガエルに、まだまだよ、もっともっと大きく!と言い続け、悲惨な結末を迎えます。この寓話の教訓はないものねだりをしない、身の程を知れ。

カエルと並んでこの季節の代表選手はカタツムリですが、日本ではアジサイと共に描かれるのが定番。アジサイはどんどん品種改良されて新種が増えていて、あちこちで咲き誇っていますが、カタツムリはどこへ行っちゃったんでしょう?

ところ変わってフランスは15世紀。ベリー公のいとも華麗なる時祷書にキリストの「パンと魚の奇跡」のページの囲みの装飾にカタツムリが沢山描かれています。ただし花はヒエンソウ。なかなかインパクトのある色彩で目を惹きますが、この組み合わせは、中世以来、「急がば回れ」を象徴する文様だそうです。

雨降る頃の


そしてカタツムリのねばねばした体液は、写本の装飾の金箔を置く際に、糊がわりに使用されていたとも。

あ、そしてフランスではカタツムリ=エスカルゴ、食べます!


投稿日 2015年06月21日 11:22:09
最終更新日 2015年06月21日 11:22:26
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2015年07月20日
COOL クールという英語は涼しい、涼しげ、冷静、冷淡、さらにはいかす、かっこいいなどの意味。

フランスでもこの英語をそのまま取り入れて、人や物事がちょっといかすとかかっこいいの意味に使われています。ある頃から、それが日本語の禅 ZENにとって代わった感も。最初は和風でCOOLな感じでZENだったのですが、段々まぜこぜになっているかもしれません。


COOL

COOL TIME   2015 Aug 5ー30



Gallery USHIN

カリグラフィー作家 五木田 摩耶
切り絵作家 紙屋初瀬
グラスジュエリー 塚本昭子  による3人展

会期:8月5日(水)より30(日)11~17時
*休廊 月・火 8/12〜16はお休み

旧作が中心ですが、久しぶりにシャンソンの作品を展示いたします。 会期中の土日は在廊予定です。

COOL
22,23日は午後2時から、どなたでも参加できる かんたん装飾頭文字のワークショップも行います。 参加費¥3,500

お申し込みはギャラリーまで。
投稿日 2015年07月31日 17:13:35
最終更新日 2015年08月21日 11:24:03
修正
2015年08月21日
残暑お見舞い申し上げます。

いつもこの時期になると思うのですが、カナブンや蝉はどうしてマンションの階段の踊り場、廊下、ベランダにやってきて、そこで息絶えてしまうのでしょうか。今夏も例年同様、我が庵のベランダはカナブンや蝉の墓場となっております。南無南無。

ここ数日は東京は少しそよ風が感じられることがありますが、こんもり木が茂ったお屋敷の側を通ると蝉の大合唱のすごいこと!アブラゼミ、ミンミンゼミにツクツク法師の混成合唱はすさまじいです。

そこで、以前にも掲載しましたが、小林一茶の句のフランス語訳を書いたものを再び引っ張り出してみました。


          まだまだ暑い
  
      画像をクリックすると拡大します。


そよ風は蝉の声より起こる哉   (c)La plume d’oie

はたしてこの蝉は何ゼミだったのでしょうか?


先月お知らせした、この暑さに少しでも涼感をと企画されたCOOL TIME展は小手指のギャラリーUSHINで今月30日まで開催しています。

そこで展示されているちょっとぞわっと涼感を誘う貼り絵作品をば。



                        まだまだ暑い   画像をクリックすると拡大

鐘巻 貼り絵作品 紙屋初瀬 

「鐘巻」は能「道成寺」の原形ともいわれる曲で、黒川能では今でも「鐘巻」が演じられています。


紙屋初瀬さんの今回出展の貼り絵作品はこの「鐘巻」のほかに「夕顔」と「杜若」と、どれも能の曲目から着想を得られたものです。


COOL TIME展  於ギャラリーUSHIN

           
投稿日 2015年08月22日 23:00:21
最終更新日 2015年08月22日 23:01:23
修正
2015年09月20日
似たようなことを昨年も書きましたが、コンビニだのスーパーだの、デパ地下だの、ただいまの季節限定商品は「栗」。栗を使った洋菓子の代表と言えばモンブラン。もともとはフランスとイタリアの山間のお菓子。名前のモンブランは山でも有名ですが、白い山を意味します。

パリでの学生時代、確か試験だか大きなレポート提出した後だったか、フランス人の友人に、さあ、終わったからパ〜っとやらない?とルーヴル美術館内にあった学校を出て、5分ほど歩いて連れて行かれた先がアンジェリーナというサロン・ド・テでした。(今では日本にも支店あります)

1903年開業というその店内は創業当時の有名な建築家による内装で、ベルエポックにタイムスリップしたような雰囲気。初めてだったのでキョロキョロ。その友人はよく知っていたようだけど、お安くはないので今日みたいな特別な日にだけと。モンブランはこの店の売り。ショコラショー(ホットココア)もここの売りでしたが、庵主はさすがそこまで甘いのはと紅茶で済ませたはず。友人はもちろん両方頼んでたいそうご満悦でした。フランス人てどうしてこんなあみゃいもの大量に押込めるんだろう?と内心びっくりしつつ、モンブランが子供のころは苦手だったのですが、ここのはとても美味しく頂きました。でもやはり、量といい甘さといい、今はとっても無理かも。近頃ではミニサイズもあるようですが...


                        モンブラン
             
甘いのはお好き?Vous aimez les sucreries? (c)La plume d’oie 2015

フランスの代表的なスイーツの図柄の蔵書票を作りました。モンブランも入っています。

投稿日 2015年09月22日 16:44:14
最終更新日 2015年09月22日 16:45:17
修正
2015年10月20日
お店のディスプレイやらなにやらハロウィンとカボチャ。日本では年々、ハロウィンは子供の仮装パーティーとして定着しつつあるような… どんなお祭りなのかはどっかへ行っちゃってますねェ。

例年のことながらカリグラフィーのレッスンでもハロウィンは定番の題材です。そこで、やはりどうしてカボチャなの?という話に。

       定番ながら

諸説ありますが、ある性悪な男が天国の門番の聖ペテロをだましてこの世に蘇り、さらに悪行を続けたため、ついに聖ペテロの怒りをかって天国でも地獄でもない暗闇に追放されます。それを憐れんだ悪魔が石炭を燃やして灯りとして与えたという話。または、悪魔と魂をとらないと取引したために地獄にも行かれず、あの世とこの世を彷徨うはめになり、真っ暗なので悪魔からもらった火種をカブに入れてランタンにしたという話などなど。それがやがてカボチャのランタンになったわけです。 

古くはケルトの風習ですが、10月31日は日本風にいうと地獄の釜の蓋が開き、あの世とこの世が繋がってしまう日で、悪魔やら悪霊やらがこぞってやって来て、この世の人間は魂をとられてあの世へ連れて行かれるといいます。だからお化けの仮装して仲間だと思わせるよう仕組んだり、火を焚いて悪霊を追い払ったりということのようです。

そしてキリスト教では11月1日は諸聖人の大祝日、2日は死者の日で、フランスではお墓参りをする習慣があります。この時期になると花屋さんには菊の鉢植えがぎっしり。花持ちが良いのと季節の花ということから、フランスでもお墓に備える花は菊なのです。


                      定番ながら 今頃の時期のパリの花屋の店先 



投稿日 2015年10月23日 14:55:10
最終更新日 2015年10月23日 14:55:10
修正
2015年11月23日
クリスマスの赤い色  フランス ストラスブールのノエルの街頭のデコレーション 

街はクリスマス色がだんだんと濃くなってきました。

クリスマスというと「赤」。

これは十字架にかかったキリストが流した血の色に由来し、その愛や寛大さを表しているといわれています。

サンタさんの服、リンゴ、柊の実、ポインセチアなどなど...そしてヨーロッパでは胸元の赤いコマドリ、アメリカでは真っ赤なカーディナルがよく登場します。

カーディナル、和名は猩々紅冠鳥(ショウジョウコウカンチョウ)といい、英語のカーディナルという呼び名はカトリックの枢機卿から由来し、その僧衣が赤いことからきています。


     クリスマスの赤い色

ただいまノエル展開催中。11月27日(金)〜 12月2日(水)12:00〜19:00  最終日は17:00まで

於 神楽坂セッションハウスガーデン
投稿日 2015年11月30日 10:14:33
最終更新日 2015年11月30日 10:15:34
修正
2015年12月20日
先月の記事でクリスマスの赤を取り上げましたが、もうひとつ、クリスマスのシンボルカラーというと緑があります。
そう、クリスマスツリーがその代表ですね。ツリーは一般的にはモミの木を使用されますが、これはやはり常緑樹ということから、永遠のシンボルとなっています。

ということは、もうすぐやって来る正月の門松も同じような意味合いから用いられています。古くは中国は唐代においても、松が常緑で長寿を象徴することから門前に飾られたりしたものが、平安期以降、日本でも取り入れられたという節も。
昨今の住宅事情もあいまってか、普通のお宅に門松を見かけることが珍しくなってきていますね。

ヨーロッパ、とくにフランスを含む北の方では、新年の飾りとしてヤドリギがあります。これも常緑なこと、白い実がたくさんつくことから子宝など、やはり永遠、子孫繁栄の象徴となっていますが、古くはケルト文化に遡り、神聖視されていて、無病息災や邪気を払うとされていました。12月31日が明けて新年になると、吊るされたヤドリギの下でキスを交わして幸せな一年を願う風習もあります。場所によっては豊作を願うことも。
普段は他の木に寄生してちゃっかりもので、嫌われものですが、お正月だけは特別扱いです。



            とこしえのシンボル

©La plume d’oie 2015 
エピファニー(キリストご公現祭1月6日)に雪が降ると、納屋がいっぱいになる。
フランスの言い伝え。正月に雪が降るとその年は豊作であるということ。
ヤドリギのブーケの下で雪だるまに興じるお猿さんたち。

     とこしえのシンボル

今年も能楽さんぽをご愛読ありがとうございました。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

投稿日 2015年12月28日 11:25:35
最終更新日 2015年12月28日 11:25:35
修正
2016年01月20日
今年の干支は申ということで、カレンダーにフランスの中世写本や18世紀の装飾などを参考にしたお猿さんたちを登場させました。その1,2月を飾っているのが先月の鵞毛庵の記事に掲載したもの。そしてこちらが最後のページの11,12月を飾る作品です。


Singerie サンジュリー



©La plume d’oie 2015
De la musique avant toute chose  Paul Verlaine(1844-1896)
何よりもまず音楽を   ポール・ヴェルレーヌ  
図柄の時代に合わせてフランスの17-18世紀の書体を使用

このお猿さんたち、18世紀のフランスの装飾画家クリストフ・ユエ(Christophe Huet1700-1759)が描いた猿が擬人化されたシリーズに着想を得ています。田園風景や猿を擬人化した図柄サンジュリー、中国趣味のシノワズリーを得意としていて、館や城の室内装飾を手掛けており、お猿さんたちは当時の衣装をまとい、楽しそうに描かれています。


                            Singerie サンジュリー

                      パリ郊外のトワリー城の装飾部分

このクリストフ・ユエのお猿さん達はマイセン焼にもなっていて、フランスのお城や館の暖炉のなどによく飾られています。見ざる、言わざる、聞かざるではなく、賑やかに音楽を奏で、歌ったり踊ったり♬


Singerie サンジュリー
投稿日 2016年01月30日 21:55:49
最終更新日 2016年01月30日 21:55:49
修正
2016年02月20日
                      フィリグランヌ

                      1350年ごろのフランスの写本より  フィリグランヌの装飾が施されているH


フィリグランヌ(Filigraneフランス語)は、ヨーロッパの中世写本に登場する頭文字の装飾。本来は線条細工を指している言葉で、日本ならば例えば秋田の銀線細工の装飾品などを思い浮かべてください。

この装飾に関する資料が見当たらないし、その細かさ故になかなか着手できずにいましたが、最近、超極細のカラーペンが売り出されたり、ネットであれこれ検索できて写本の画像も沢山入手できるのとで、思い切ってやってみることにしました。本来は先の細い羽根か金属のペンを使用すべきですが、無理に昔どおりにやらずとも現代の便利なものは大いに使うべし!と、中世装飾を教わった師のありがたいひと言を思い出し、文明の利器を活用中。 

フィリグランヌ
BOOK ORCHESTRA展に出品する蔵書票EXLIBRIS星の王子様 ©La plume d’oie 2016  Dの字の装飾がフィリグランヌ


早速、超極細カラーペンを手に、古典的な定番スタイルから独自にあれこれアレンジしたり、結構ツボにはまっています。でも、目は疲れるし、腱鞘炎にもなりそう…




3月、4月は展示の機会が多いので、このフィリグランヌを取り入れた作品を展示予定ですので、実物をご覧いただければ幸いです。

東日本大震災 チャリティーアート展 
3月11日(金)〜19日(土)12:00〜19:00(初日14:00から、最終日17:00まで)
神楽坂セッションハウスガーデン 
新旧合わせて小作品を出品予定です。

BOOK ORCHESTRA展
3月29日(火)〜4月17日(日) ギャラリーUSHIN  小手指 

12星座展
4月4日(月)〜4月16日(土) ギャラリーK  越谷

こちら二つの展示の詳細はまた来月に。 

    
投稿日 2016年02月29日 0:26:39
最終更新日 2016年02月29日 0:27:23
修正
2016年03月20日
先月の記事で触れた3月末から4月にかけての展示はちょっと星づくし。 29日からスタートした毎年恒例のBOOK ORCHESTRA展では 「星の王子さま」をテーマに選び蔵書票や豆本など出展しています。 
星
(c) La plume d'oie 2016 クリックして拡大   
星の王子さま より  心でしか見えないんだ。肝心なことは目で見えないんだよ。

4月4日からは南越谷のギャラリーKで開催される「12星座展」にも参加します。12星座の中からふたご座、しし座、かに座とうお座を選び、星の王子さまやアルフォンス・ドーデの「風車小屋便り」の「星」からの一節を加えて作品にしました。

星 (c) La plume d'oie 2016
Cancer かに座  風車小屋便り より  私たちの周りを星が静寂な歩みを続けていた…

というわけで、星づくしの春を迎えている鵞毛庵です。


投稿日 2016年03月31日 21:13:19
最終更新日 2016年03月31日 21:13:19
修正
2016年04月20日
先月の記事でお知らせしたBOOK ORCHESTRA展での蔵書票で一番人気だったのは「ねぇ、ひつじの絵を描いてよ」。 

            蔵書票 星の王子さま

               (c)La plume d’oie 2016 

サハラ砂漠に不時着したある飛行士が飛行機の修理をしていると、突然、声をかけられます。そこにいつの間にか立っていたのが金髪の少年。その姿はまるでどこかの小さな王子さまのようでした。

やはり、この最初に出会った時の王子さまの姿が人気のひみつなのでしょうか。 この姿で登場するのは最初の時だけで、ほかの場面では緑色のジャンプスーツのようなスタイルです。


人気の2番手。  蔵書票 星の王子さま   
        (c)La plume d'oie 2016

バラの花は、作者のサンテグジュペリの夫人であったコンスエラを象徴していると言われています。これ以外にもさまざまな角度から解釈する読み方もあるようで、私自身も最初に出会った小学1年生の時、高校のフランス語の授業で読んだ時、フランスに長く住んでいた時、そして今になって何度も読み、書いていると、いつも違った感想や、発見がある小さな王子さまの物語です。

蔵書票 星の王子さま  バオバブの木  (c)La plume d'oie 2016

小さなうちに摘み取らなかったために、あっという間にある星を覆ってしまった3本のバオバブ。王子さまは飛行士に、バオバブだって、大きくなる前にはみんな小さかったんだ、と言います。 

この物語が書かれた時代背景から、この3本のバオバブは第二次世界大戦中の日独伊三国同盟を象徴しているという説も。 そうでなくても、なんらかの問題は大事になる前に時期を見極めて対処すべし・・・・・  

投稿日 2016年04月28日 22:43:20
最終更新日 2016年04月28日 22:43:20
修正
2016年05月20日
今、NHKで海外ドラマ「マスケティアーズ」を放映しているのをご存じでしょうか?マスケティアーズとは銃士隊のこと。つまり、あの三銃士とダルタニアンの物語です。

原作はフランスのルイ王朝時代の物語でアレクサンドル・デュマによる1844年に書かれた新聞小説Les trois mousquetaires(三銃士)です。これが新聞小説って、ちょっとワクワクしますが、実はかなりの長編時代劇の冒頭の一部にすぎず、史実に沿いながら、田舎から出てきた若いダルタニアンがアトス、ポルトス、アラミスの三人の銃士たちと出会ってさまざまな困難を乗り越え、続編ではその20年後、国王はルイ14世となりフランスとイギリスを股にかけて活躍、最終編はさらにその10年後で、鉄仮面のエピソードが登場し、ダルタニアンの死を迎えるというもの。実在の人物も多く登場します。

密書

パリ17区にあるダルタニアンの像

こういった冒険活劇につきものなのが「密書」。そんな密書がどんな字で書かれていたかを想像するのもちょっと楽しいものです。フランスの17世紀、国王のルイ13世が書体を少し統一化しようと提案したとかで、当時の宮廷お抱え秘書官で書家であったバルブドールという人が考案したのがロンドという書体。15〜16世紀、フランスで多く使用されていた手書きの書体を改良したものなのですが、バルブドールがあまりにも巧みな技術の持ち主だったのもあり、書くのも読むのも結構難しく、徐々に特殊な書類にのみ使用が限られていきました。 

       密書
Louis Barbedor 1640年ごろ ルイ・バルブドールによるロンド体の書面


三銃士に登場する「密書」がこんな風に書かれていたやも、と想像すると興味は尽きません。
投稿日 2016年05月30日 15:40:25
最終更新日 2016年05月30日 15:42:35
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2016年06月20日
文明の利器

いやはや、文明の利器に振り回されている今日この頃。三余堂もネット回線に不具合。鵞毛庵もWihiがすぐに圏外になり、お手上げ状態。

しかし携帯電話、スマホ、タブレット、パソコンなどなど、すっかり生活を支配されている感がますます。それと相反するように、選挙の投票用紙はえんぴつで手書きというのはなんでだろ〜〜♪

さていつ回線が圏外になるやらドキドキ。

今月14日から恒例の巴里祭に寄せたアート展を開催します


巴里祭に寄せたアート展


2016年7月14日(木)〜19日(火) 12:00〜19:00
    最終日は17:00まで
於 神楽坂セッションハウスガーデン

16日(土)は17:00からパーティー、17:30からアコーデオン(岩城理恵子)のミニライブ、ドリンクチャージ¥700

鵞毛庵は春のBOOK展に出品した星の王子さまの蔵書票シリーズを中心にした作品と、豆本、蔵書票、栞など展示販売を予定しています。

豆本新作はアールヌーボー調のパリの地下鉄口シリーズ。パリ在住時に撮りためた写真に駅名は時代に合わせた書体を使用しています。

文明の利器

ワークショップはミニ額付のカリグラフィー体験と豆本。今、都内で展覧会をやっているトワル・ド・ジュイ(西洋更紗って呼んでますが)柄をプリントした紙に字を書きこみます。
文明の利器

どなたでも体験できますので、お気軽にお声掛けください。

鵞毛庵は 14日初日は16:30〜、その他は12:00から在廊予定です。
投稿日 2016年07月07日 11:43:24
最終更新日 2016年07月07日 11:48:07
修正
2016年07月20日
26日から 「わわわ句会展」に参加します!

暦の上ではもう晩夏!

暦の上ではもう晩夏!

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さまざまな作家仲間でやっている句会の展示でした。

期間中になんとか梅雨も明け、早朝からセミも鳴き、夏祭りに花火にと夏らしくなってきましたが、俳句の季語では立秋せまり、もはや「晩夏」です。 
投稿日 2016年07月31日 17:49:04
最終更新日 2016年07月31日 17:50:48
修正
2016年08月20日
残暑というには暑すぎる日々、しかし、立秋を迎えたとたんに法師蝉はしっかり鳴き声をあげて、そうか、やっぱり暦の上では秋なのかぁ…と。

我が庵のバルコニーは、毎年のようにセミやカナブンの終焉の地となっており、ジジッ、ジジジッと仰向けになっている蝉やじっと動かないカナブンがなんだか哀れです。

そっと触ると実はまだ生きていて、何もこんなコンクリートで死ぬことはない、せめて土に近いところや街路樹にでも不時着すればと思い、バルコニーの淵に乗せてやると、案外すぐに飛び立って行くものです。

              蝉
         
古代中国ではセミはよみがえりや復活のシンボルで、玉で蝉を象ったものを埋葬品にしていました。そういえば、古代エジプトではスカラベ(コガネムシ)が同様に埋葬品でした。

ひょっとすると、うちのバルコニーは彼岸と此岸の接点なのかしらん。
投稿日 2016年08月31日 1:04:32
最終更新日 2016年08月31日 1:04:32
修正
2016年09月20日
今からちょうど600年前の15世紀初頭、フランスの暦を飾るのはブドウの収穫です。「ベリー公のいとも華麗なる時祷書」という、世界で最も美しい本とされている豪華写本ですが、その暦の9月の挿絵がブドウの収穫なのです。


600年前の9月

手前がブドウ畑で収穫作業中、奥の城はアンジューにあるソミュール城で、この時代にすでにワインの産地として知られていたことがうかがえます。

現在でも産地や品種によって多少ずれはあるものの9月中心に収穫することが普通ですが、猛暑の年は8月中に済ませるということも。ちなみにパリのモンマルトルの丘のブドウの収穫祭は10月です。

地球温暖化だのいろいろ言われてますし、東京もパリも以前より気温が上がっている気がしますが、600年という尺でみると、そう変わりはないのかなァ...

フランスにはブドウやワインに関する格言や言い伝えが山ほどあります。



600年前の9月
9月の湿り気は樽を空にしない  (c)La plume d’oie 2012
投稿日 2016年09月20日 19:24:42
最終更新日 2016年09月20日 19:24:42
修正