http://nogakusanpo.maya-g.com
記事移動
2016年06月01日
ケロリンの季節
カテゴリ : [案内望遠鏡]
陽気の具合だろうか。頭は重く目も霞み、やれやれと思いながらも図書館へ。
玄関で出迎えるのは図書館員の渾身の作品、今月のお勧めコーナーである。
手招きをしているのはA5版サイズのオレンジ枠に男女の横顔。 
“近くばよって目にも見よ!”  “富山の置き薬ケロリンなり。”
そうだ ケロリンがそのままに表紙となっている本が呼んでいる。
茶色の粉の中に、きらきらと透明に光るものが混ざった鎮痛剤のケロリン。
如何にも苦く、薬効あらたかそうな粉薬が、ハトロンの薬包紙に包まれていたっけ。
蜜柑色の枠に男女の横顔、黒でケロリンと書かれたタバコ大程の袋に入っていた。
それが大きく化けて 図書館の正面でこちらを待構えているのだ。
調べ物を済ませたら、一寸手にしてみよう。


この大きな頭痛薬はあのニッキの味を彷彿とさせる。
ミステリーの早川書房が出した 《昭和レトロ商店街》という本だ。
ケロリン、正露丸、グリコのキャラメル、赤チンに都こんぶなど、懐かしさを覚え
時代を超えて愛されてきた品々を巡るコラム集だった。
著者は庶民文化や昭和レトロについて造詣が深い、町田忍氏である。

目次には “ケロリンとは何か、” “黄色いケロリンおけ” と続く。
ケロリンを販売する内外薬品は1902年創業の富山の製薬会社。
会社は紆余曲折があったものの、1925年に液体しかなかった鎮痛剤を携帯や保存を考えて
粉末の開発に挑戦。 試行錯誤の末に 舶来のアスピリンに生薬のニッキを混ぜ、
全く新しい鎮痛剤が開発されたという。 
ケロッと痛みが取れる!それで “ケロリン”。
すぐに評判となるほどの人気だったようで、ケロリ、ヒロリン、ケロゲン、ケロール等々
あやかり商品名が出るわ、出るわ。 似て非なるパッケージのあやかりケロリン大氾濫。
それらを押さえ抜き、商標問題で戦い、今も変わらぬ姿で販売されているのだから信奉者、いや
後援者といったらいいのか、いやいや、ただただ 効くのだ。
 

オレンジ枠の中に頭痛の婦人と笑顔の紳士を見るだけで 充分鎮痛効果を発揮。
重い頭が少しは楽になったので、この本も借りて帰ろう。
挟まれたままの貸出シートが出てきた。 日付は2010年5月30日。
奇しくも六年前の同日。 
梅雨入り前は誰しもこの本に引き寄せられるのだろう。


黄色いケロリンおけはネットでも売られている人気者だ ケロリンの季節










投稿日 2016年06月01日 23:23:25
最終更新日 2016年06月01日 23:23:25
修正