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2015年11月01日
折り紙
カテゴリ : [案内望遠鏡]
目の覚めてしまった夜をやり過ごすには、手に触れた紙で何となく折り紙をしながら
霜月の虫の声を聴く。 子供の頃には誰しも折り紙の経験があろう。
特別なこととは思わずに当たり前に鶴を折っていたものである。
日本人の指先の器用さは折り紙の経験からなのか、もともと器用だから折り紙を
するのか。兎も角、物の形を考えるのには大いに刺激があったし、色彩感覚も
育てられたと思う。 折り紙が幼児教育に取り上げられたのは明治のことだという。
もとより日本の生活は物を折ったり、畳んだりの繰り返し。 朝は四角い布団を
畳むことに始まり、夜には直線で縫い継がれた着物を畳み付けて一日が終了。  
尤も、それらを誰がするのかはそれぞれであったろうが。

以前、紙の伝来のことを記事にしたことがあるが、大陸から日本への製紙技術は
610年、高句麗を経由してもたらされる。
渡来人によって7世紀初めに、紙の製法が日本に伝えられたお蔭で薄くて丈夫な
紙、「和紙」が生まれた。 本格的な紙の国産化が始まるには100年ほどかかった
が、『正倉院文書』に、737年(天平9)には、美作、出雲、播磨、美濃、などで
紙漉が始まったことが記されているという。
公文書の記録に大切な紙の生産が始まっていたということだ。 国は紙の製造と
調達を管掌していた。紙の重さを図り知る。 紙は文字を書きつけるばかりでなく、
『包む』という仕事も請け負った。 神への供物を包む。信仰と結びついた神聖な
仕事も担ったのだ。 そして紙は折り目が工夫され、儀式や祭礼に活躍する。
朝廷での儀式、神祇に使われたものが、次第に公家から武家へと移っていく。
鎌倉時代には、朝廷と新たに台頭した武家との意思疎通の為の手段「礼法」として、
贈答や儀礼用の“折りかた”が発展したという訳だ。
「伊勢」「小笠原」「今川」「嵯峨」など各流派の秘伝として伝えられ、様式化した。
進物の贈り物に付ける、赤白の紙を折った熨斗などがその名残である。

折り方そのものを楽しむようになったのが「折り紙」で、江戸時代に入ると紙の生産が
増え、庶民にも親しめる折り紙になったという。なんせ、1797年(寛政9)には世界で
最も古い折り紙の本「秘傅千羽鶴折形」が出版されている。
その後200年も経つと、トイレットペーパーでの折り紙が本となり、売られる。これは 
東京大学の学生諸子による考案だ。現代折紙の普及、発展、そして何より折紙を楽しむ
ことを目的として活動を始めたそうだ。
今や折り紙は教育や趣味を超えて、幾何学やコンピューターグラフィック、航空工学、
老化防止、リハビリの分野でも研究の対象となっている。
学者の間では、折紙の数学というテーマで研究がなされるらしく、如何に、作品を
傷めることなく、紙を平らに折り畳むことができるかどうかなどを数学的な研究対象
として取り組むようである。角の三等分などが可能である「折り紙幾何学」という
分野の発見、コンピュータの応用、などなど、広く研究されているそうだ。

銘 曙 折り紙 手元の菓子包みで
      

        鶴の嘆息 折り紙 いや、短足の鶴…

 
        

世界各地に広まった「折り紙」は、愛好家の団体が沢山あって盛んに活動を
しているという。近隣のゆうゆう館も 毎月折り紙の日なるものがあり、老若男女が
相集って頭の体操に勤しんでいる。






投稿日 2015年10月31日 23:41:41
最終更新日 2015年11月01日 13:06:11
修正