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2007年02月20日
月はひとつ
               月はひとつ
                      (c)La plume d'oie 鵞毛庵 2007 「松風」  27cm x 22cm

  今月は今年の歌会の「お題」に因んでお月様がらみで「松風」の一節より。

     月はひとつ 影はふたつ  La lune est une et ses reflets sont deux

  「松風」は、須磨の浦の二人の美しい海女の姉妹、松風と村雨がかつて流罪となってそこに滞在していた中納言在原行平(業平の弟)の寵愛を受けたことから、後年、この姉妹が亡霊となって旅の僧の前に姿を現し、昔語りに松風は行平の形見の衣を身にまとい、心乱れて舞うという物語。海辺で昔日の思いを語りつつ汐汲みをする場面で、ふたつの汲み桶に月が写っているところ。

この作品は既存のさまざまな書体から庵主が考案した自由書体で、細い文字は面相筆を使用。夜の海辺に煌々と照る月や装束の色合い、潮騒に漂っている思慕を想定した作品です。現在の須磨の海岸ではこんな情緒は望めませんね。


  月はひとつ  月はひとつ
上記作品部分  (c)La plume d’oie 鵞毛庵 2007         部分 Lune(月)  (c)La plume d’oie 鵞毛庵 2007

今までも何回かいろいろな書体で書いている一節です。鵞毛庵サイトでも「こんな1枚」に違う作品を掲載しています。 http://www.maya-g.com/monthly/2003/09/index.html

 さて、今月の「三余堂月次」で取り上げている セレーネ 「月に願いを!」ですが、それに応募するのだと張り切った三余堂亭主。字数制限があるので自ら詠んだ歌二首を俳句に変換せよ!との命が鵞毛庵に届けられました。 やれやれ
早速、変換作業に取り掛かった庵主。

  月は冴へ あたりも澄みて 妙生寺の 鏡もひときは ひびくこの夜
   陽の落ちて 月の光の見るにつけ 思い出づるは 君と会ひし日
    どなたのことかしらん

その結果、二首目の歌を俳句に変換した 月光の彼方にありし逢瀬かな が採用されたのですが、翌日次のようなことになって戻ってきました。

  月光のかめんにありし あふせかな 
         
この再変換は庵主のつぼにかなりはまって、みごと一本とられました。

でも、やはり仕切りなおしせねばと、「松風」の作品と連想して庵主の応募句はさらに気取った練り直し版へ。     

  古の月華の逢瀬抱きをり (いにしへのげつかのあふせいだきをり) 
  注:月華とは月光のこと  

  融や行平の時代に詠われたのも、松風村雨が涙したのも、三余堂のかつての逢瀬の月も、巴里の月も、みな同じ月ひとつ。
投稿日 2007年02月21日 3:01:21
最終更新日 2007年02月21日 3:03:20
修正