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2015年03月20日
研究であれ読書であれ、書物に没頭する人を「本の虫」といいますが、これは紙魚(しみ)が本の紙を食べる様子からこのように言われるようです。英語でもbookwormと言い、紙魚のことであり、本好きのことも指しています。 

ところが、フランスでは、紙魚はもちろんいますが、本好きのことは「図書館(書架)のネズミ」と呼ばれています。始終、図書館や図書室に出没しては本をむさぼり読む姿が、ちょろちょろ書架の陰を動き回るネズミを連想させるのでしょう。

さて、この時期、毎年恒例のBOOK展が催されます。今年はモノトーンとモザイクがテーマですが、上述のネズミにヒントを得たものやラ・フォンテーヌの寓話の動物が潜む蔵書票など新作とただいま格闘中です。



                 虫?それともネズミ?

BOOK ORCHESTRA Monotone-Mozaic

2015年4月1日〜26日 休廊 月曜日  11:00〜17:00
於 ギャラリーUSHIN 
所沢市小手指町1-22-13  最寄駅  西武池袋線 小手指駅 北口 徒歩5分
出展者 : 大野加奈 小野寺美樹 倉片友子 五木田摩耶 田村理江 松田富美子 

蔵書票の他、豆本、ブックカバー、栞をはじめ、アート&クラフトのほか、作家の田村理江さんがセレクトした本やお話会やワークショップなど

鵞毛庵はラ・フォンテーヌ寓話12話を上下2冊豆本に仕上げ、フランス装のカバーをかけるワンデイレッスンも行います。
4月18日、25日 両日とも14:00〜  ¥3,500(お茶付き)

展示期間中、蔵書票をお買い上げいただいた方には、お名前やイニシャルをカリグラフィーでお入れします。お気に入りの本、大切にしたい本の見返しにお貼りください。

本の虫や書架のネズミにはきっと楽しさ満載の企画展です。


           虫?それともネズミ? 
 ラ・フォンテーヌの寓話 カラスとキツネが潜んでいる蔵書票(Exlibris) (c)La plume d'oie2015
投稿日 2015年03月21日 1:31:07
最終更新日 2015年03月21日 1:31:07
修正
2015年03月12日
カテゴリ : [三余堂月次]
この時期 目はくしゃくしゃ、鼻はずるずると苦しむ御仁には森林破壊の王ギルガメシュの話に
出てくるレバノン杉はぞっとしない話だろうか。 が、しばし 一くさり。

今は海抜1000メートル以上の乾燥したレバノンやトルコの地中海沿岸の山地に
わずかに生息するというレバノン杉は、実はマツの仲間である。
とても硬く、腐りにくい材質は船材やマストには最適であったという。勿論 街造りには必須である。
聖書で香柏と記しているが、それはそれは良い香りを放ち 神殿の中を芳しい香りで包む、
神と向き合うには格好の内装材だった。
古代の王は宮廷の壁から床、そして天井にいたるまで、香柏の板で貼りめぐらしたという。
その為にどれほど大勢の人を伐採の為に駆出しただろうか。そしてどれほど夥しく伐採しただろうか。
人口も増え、文明が花開いた地の希少な芳しいレバノン杉。
その杉の木は、現在のレバノン国旗の中央に描かれている。
地中海東岸のレバノン山脈から小アジアにかけて広く分布していたのに
シュメール人の時代にはほとんど切り尽くされていたらしい。
森林資源の乏しさからメソポタミアの地はインダス川流域からも木材を輸入していたという。
その下流地域も今は枯渇しているそうな。
人の欲望はその自然を、徹底的に壊し、その美を消して行った。

そう、5000年前にすでに、自然破壊の問題が起こっていた。
人間が文明を発展させれば、必ず自然を破壊する。
森を破壊しなければ生きていけなかったのだろうか。
ギルガメシュ王は大きくて、立派な街を造る為に木材が欲しかった。そこで、森に木を採りに
親友のエンキムドゥという勇士と旅立った。
祟りがあるから止めろという制止を振り切って いざ 往かん!
ギルガメシュとエンキドゥはレバノン杉の森にやってきて、その美しさに呆然とする。  が、前進!!
森の神フンババが物凄い形相で待構え、森を守るためにギルガメシュ等と闘う。
結局 森の神はエンキムドゥに殺され頭を切り落とされた。

レバノン杉の森の神 フンババを退治しなければ 人は生きていけなかったのか。
美しさに息をのんだ あの森とともに生きる道はないのか…    
「もののけ姫」ではアシタカが自然との共生で苦悩した。
フンババがシシ神、「たたら場」のエボシ様はギルガメシュの友エンキドゥ。
ギルガメシュとエンキドゥとフンババの物語は、宮崎駿の手によって長編アニメーション
「もののけ姫」になって警鐘を鳴らした。 
梅原猛は戯曲「ギルガメシュ」を書いた。
前の猿之助丈が芝居にするべく奮闘したが、日本で陽の目を見ることはなかった。
「もののけ姫」公開の前年 1996年に北京で翻訳されたものが上演。大盛況の由。

『この森を破壊し、ウルクの町を立派にすることが人間の幸福につながるのだ』と 信じたウルクの王。
人間が森を破壊し征服した、最初の記念すべき出来事を ギルガメッシュ王は成遂げた
                                                    と、いうことになる。









投稿日 2015年03月13日 15:56:02
最終更新日 2015年03月13日 16:02:21
修正
2015年03月01日
カテゴリ : [案内望遠鏡]
待ち合わせの時間潰しに本屋を覗くと思わぬお宝を見つけることがある。
図書館でもご同様。気分転換の書架の間で、大概何かにぶつかる。
帰る時は予定外の本が両腕に抱えられ、コンビニに寄ることはできない。
夜も八時を過ぎた児童書コーナーは人の気配がなく、受付け係りの見て見ぬふりの中、
あれもこれもと、本を引っ張り出し、低くて小さな椅子で読みふけるのは
少々気恥ずかしいものがある。が、図書館でのお宝発見は俄然、ここである。
夜の九時まで児童書コーナーが開いているのは何とも嬉しい。
調べものに没頭する会社帰りの中年、ひたすら鉛筆を走らせる女学生。
その横で、消しゴムかすに顔を沈めて眠る男の子達。彼らとは別の階で静寂の中
贅沢な装丁、大きな文字、著名な作家による執筆、頁を繰るだけで気分の栄養補給になる。


そんな中 『ギルガメッシュ王物語』という本を見つけた。
岩波書店からの1993年初版発行の出版で、文/絵 ルドミラ・ゼーマン 松野正子訳。
あのギルガメシュ叙事詩が絵本になっている。
穏やかならぬ世界情勢を新書やら、紛争地写真が満載のハードカバーを
館の玄関で展示紹介するが、そもそものメソポタミアのことまでは中々さかのぼれない。
神話の時代まで辿るつもりも更々なかった。
が、ギルガメッシュの背扉の文字に手が伸びて… 結局 三部作の
 『ギルガメッシュ王物語』 『ギルガメッシュ王のたたかい』 『ギルガメッシュ王さいごの旅』
と大型絵本三冊を抱えて帰ることになった。

 

ギルガメッシュ叙事詩

あのギルガメシュ叙事詩〜 なんていうとさもさも知っているかのようであるが、
ただ、耳にその響きがあっただけで、とてもメソポタミアの神様まで手が回らない。
日本の神様だって覚束ない次第で…
世界最古の文明発祥の地といわれるメソポタミア。
今のイラクとシリアの辺りで 5000年以上前に粘土板に刻まれたのがギルガメシュ叙事詩。
実在したとする説が有力なギルガメッシュという王の話で、死後間もなく神格化され
ギルガメシュ叙事詩と呼ばれる説話に纏められ、今日まで受け継がれた。
シュメール人の王ギルガメッシュは メソポタミアに住んだ人々が語り伝えるうちに変化し、
その断片が、エジプト、ギリシャ、ペルシャの神話に流れ込み、ケルト人の神話にも影響していく。
旧約聖書にもしかり。 メソポタミアはエデンの園で、アブラハムの誕生の地ということである。
因みにアブラハムさんは ユダヤ、キリスト、イスラームの神様の大元さまである。
つまり、現在、世界人口の二人に一人が一神教の教えを奉ずるといえども、
はじめのはじめは みな かみさまいっぱい! だったのである。
もっとも、神様だか、人だか境目が判らないのは何処も同じだが。
ギルガメッシュやエンキドゥ、心優しいシャマトやら、火山のことだろうと推察される怪物フンババの
登場で、その地がいかに豊かであったかを伝え、自然大災害に見舞われながらも、勇気、思いやり、
誠実、理想への努力を失わず前に進むかを体現しているというわけだ。

           絵本見開きにルーブル美術館のギルガメシュのレリーフと楔形文字をギルガメッシュ叙事詩

    ギルガメッシュ叙事詩 
メソポタミアはチグリス、ユーフラテス川に挟まれた肥沃な地であった



このメソポタミアは、最初の法典を作り、灌漑技術や一時間かが六十分だということを発明した。
“川と川の間の地” という意味のメソポタミアは世界初の文字を編出し、今にその歴史を
伝えた。 図書館でも多くの大人はこの絵本を子供に読み、ギルガメッシュ王による古代都市の
遺跡があらぬことで破壊されないことを願ったろう。












       

                 
                   
投稿日 2015年03月01日 12:51:18
最終更新日 2015年03月01日 12:56:29
修正