http://nogakusanpo.maya-g.com
記事移動
2015年03月12日
ギルガメッシュについてもう一くさり
カテゴリ : [三余堂月次]
この時期 目はくしゃくしゃ、鼻はずるずると苦しむ御仁には森林破壊の王ギルガメシュの話に
出てくるレバノン杉はぞっとしない話だろうか。 が、しばし 一くさり。

今は海抜1000メートル以上の乾燥したレバノンやトルコの地中海沿岸の山地に
わずかに生息するというレバノン杉は、実はマツの仲間である。
とても硬く、腐りにくい材質は船材やマストには最適であったという。勿論 街造りには必須である。
聖書で香柏と記しているが、それはそれは良い香りを放ち 神殿の中を芳しい香りで包む、
神と向き合うには格好の内装材だった。
古代の王は宮廷の壁から床、そして天井にいたるまで、香柏の板で貼りめぐらしたという。
その為にどれほど大勢の人を伐採の為に駆出しただろうか。そしてどれほど夥しく伐採しただろうか。
人口も増え、文明が花開いた地の希少な芳しいレバノン杉。
その杉の木は、現在のレバノン国旗の中央に描かれている。
地中海東岸のレバノン山脈から小アジアにかけて広く分布していたのに
シュメール人の時代にはほとんど切り尽くされていたらしい。
森林資源の乏しさからメソポタミアの地はインダス川流域からも木材を輸入していたという。
その下流地域も今は枯渇しているそうな。
人の欲望はその自然を、徹底的に壊し、その美を消して行った。

そう、5000年前にすでに、自然破壊の問題が起こっていた。
人間が文明を発展させれば、必ず自然を破壊する。
森を破壊しなければ生きていけなかったのだろうか。
ギルガメシュ王は大きくて、立派な街を造る為に木材が欲しかった。そこで、森に木を採りに
親友のエンキムドゥという勇士と旅立った。
祟りがあるから止めろという制止を振り切って いざ 往かん!
ギルガメシュとエンキドゥはレバノン杉の森にやってきて、その美しさに呆然とする。  が、前進!!
森の神フンババが物凄い形相で待構え、森を守るためにギルガメシュ等と闘う。
結局 森の神はエンキムドゥに殺され頭を切り落とされた。

レバノン杉の森の神 フンババを退治しなければ 人は生きていけなかったのか。
美しさに息をのんだ あの森とともに生きる道はないのか…    
「もののけ姫」ではアシタカが自然との共生で苦悩した。
フンババがシシ神、「たたら場」のエボシ様はギルガメシュの友エンキドゥ。
ギルガメシュとエンキドゥとフンババの物語は、宮崎駿の手によって長編アニメーション
「もののけ姫」になって警鐘を鳴らした。 
梅原猛は戯曲「ギルガメシュ」を書いた。
前の猿之助丈が芝居にするべく奮闘したが、日本で陽の目を見ることはなかった。
「もののけ姫」公開の前年 1996年に北京で翻訳されたものが上演。大盛況の由。

『この森を破壊し、ウルクの町を立派にすることが人間の幸福につながるのだ』と 信じたウルクの王。
人間が森を破壊し征服した、最初の記念すべき出来事を ギルガメッシュ王は成遂げた
                                                    と、いうことになる。









投稿日 2015年03月13日 15:56:02
最終更新日 2015年03月13日 16:02:21
修正