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2015年05月12日
字典
カテゴリ : [三余堂月次]
消えた記事の掘起し  2011-05-12 三余堂月次から

常用漢字の画数8画に「典」という字がある。テン、のりと読む。
典子とかいて、のりこをテンコちゃんと愛称で呼んだりするのは、その為で、
名前でとしては他に、みちこ、ふみことも読む。
源氏物語の桐壺は典待(ないしのすけ)だったが、おき、すけ、つかさ、つね、などとも読む。

この「典」は 基本となる書物のことを表していて、その大切さを言っているという。
「古典」とか「経典」の「典」で、基準となる教え。転じて、原則。 
そうなると、「典型」や「典範」という言葉が思い浮かぶ。 ずっしっと重みを持った、基準となることを示しているのだ。
読みに「つかさ」とある如く、つかさどるという意味もあって、職務として仕事をあずかる。
時代劇チャンネルでは徳川家、上様のお脈を取る特別上等の医者が登場。
御典医である。 この典医、如何に重職か…
一方、大陸では君主の衣服をつかさどる官職を「典衣」といった。 衣服係だ。
その典衣が衣服を質に入れる意味に転移か?
もっとも今現在、典衣が質入れとしての意味で分かるか。 わからねぇなぁ…

だいだい この文字「典」をじぃっと見ると、上の部分が冊という字。
この字は竹簡の形を描いたもので、竹礼に書いた物が紐で綴られた形だ。
木簡や竹簡は紙が普及するまでの書付物だったから、要は書物を示す。
では下部は。 当然それを載せる台、机ということになる。
机の上に本が置いてある。乱雑に埃に塗れていてはいけない。
整然と、恭しく、鎮座ましまして…  そんな書き物が 「典」 というわけである。

以前 よめねぇやつは 辞書をひけ!と文字を読むと題して記事を書いたが、
この辞書と辞典、字典に字引、違いはなんだと手繰っていく。
う〜むと唸りながら  はたまたう〜む。  
そんな折から、《岩波国語辞典》の編纂に関わられた水野静夫先生の近著《曲り角の日本語
》岩波新書 でその違いをよく識るところとなり、本題の日本語については 溜飲を下げたり、感心したり、はたまた、にやにやとしながら頁を繰る。

辞書の件、荒っぽく言えば同じことで、と先生の言。
電子辞書はさておき、ともかくも手元の字典の埃を払い机上に鎮座願い上げ!



投稿日 2015年05月12日 9:35:39
最終更新日 2015年05月12日 9:35:57
修正