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2013年07月01日
夕顔
カテゴリ : [案内望遠鏡]
もうすぐ下町の夏の風物詩 『朝顔市』である。
所は東京、JR山の線の鴬谷駅から歩いて5分ほど、入谷の鬼子母神周辺に朝顔がいっぱいに並ぶ。
現在は『朝顔まつり』と称して実行委員会なるものが運営しているらしいが、
浅草 浅草寺のほおずき市と並んで、夏を運んでくる。今年も7月6、7、8日と朝顔の市が立つ。
とうとう、お江戸にも夏がやってきた。
日の出とともに開く朝顔である。 早朝5時から市は 言問通り沿いにずらりと
100軒近くもあろうか、露店には色とりどりの朝顔の鉢。
夕は夕で、屋台も何も人で埋め尽くされた中、兎に角、明朝の花の色を楽しみに
行燈造りの鉢を下げて帰途に就くという 背広姿も見かける。
そんな夕暮れ、私を見てとばかり、白く大きな花をつけたユウガオが鉢に納まって香りを放つ。
が、貴方の為にといくら丁寧に世話をしても、干瓢の実をつけたり、瓢箪がなることはない。
市で売られるのは、ヨルガオと呼ばれる“ナス目、ヒルガオ科、サツマイモ属、ヨルガオ種 ”
という代物のようで、最後に干瓢となるウリ科のユウガオの花ではない。似て非なるので念のため。
朝顔市では屋台のソースやら、醤油の芳しき香りに押され気味とはいえ、
暮れゆく喧噪のなかにその気高さを保っているユウガオ、いや、ヨルガオか…
闇に浮かぶ夕顔の花 ヨルガオ?
『源氏物語』五十四帖の第四帖に『夕顔』が登場。
光源氏が17歳の夏。乳母を見舞う折の出来事だった。
垣根に咲くユウガオの花に目を留めた源氏と、邸の住人との逢瀬が物語になっている。
源融の旧邸六条河原院が舞台だとされる何某の院でのこと。
邸の住人、夕顔と共にいた光源氏は女の霊の恨み言に遭う。
そのまま人事不省になる夕顔。そして、明け方には息を引き取るという悲劇が起きた。
夕顔は頭中将の側室で、玉鬘という姫がいたが、源氏は知る由もなく
『帚木』巻で語られた“雨夜の品定め”で、“常夏の女”として登場するその人であった。
ユウガオは まさに佳人薄命な女性を表すにふさわしい一夜限りの花だ。
能では『源氏物語』の「夕顔」の巻を題材にして『半蔀 』という曲がある。
源氏と夕顔との出会い、恋慕の情を美しく描く。
舞台上に蔓が絡み、瓢箪が下がる半蔀の作り物が登場。
小ぶりに白い花も付き、まさにそれはユウガオだ。
これに対して、『夕顔 』 という曲も在る。
荒れ果てた河原院での怖ろしげな夕顔の死を描き、旅の僧の弔いがそれを救うのである。
この世の苦悩から解放され 穏やかな喜びを得る夕顔の様を静かに見せる。
迷いもなしや 東雲の道より 法に出づるぞと。
暁闇の空かけて 雲の紛れに 失せにけり。
明け方、白い花は静かに閉じていく 。
観世九皐会 7月定例会 『夕顔 』 のシテを 三余堂 勤める
所は東京、JR山の線の鴬谷駅から歩いて5分ほど、入谷の鬼子母神周辺に朝顔がいっぱいに並ぶ。
現在は『朝顔まつり』と称して実行委員会なるものが運営しているらしいが、
浅草 浅草寺のほおずき市と並んで、夏を運んでくる。今年も7月6、7、8日と朝顔の市が立つ。
とうとう、お江戸にも夏がやってきた。
日の出とともに開く朝顔である。 早朝5時から市は 言問通り沿いにずらりと
100軒近くもあろうか、露店には色とりどりの朝顔の鉢。
夕は夕で、屋台も何も人で埋め尽くされた中、兎に角、明朝の花の色を楽しみに
行燈造りの鉢を下げて帰途に就くという 背広姿も見かける。
そんな夕暮れ、私を見てとばかり、白く大きな花をつけたユウガオが鉢に納まって香りを放つ。
が、貴方の為にといくら丁寧に世話をしても、干瓢の実をつけたり、瓢箪がなることはない。
市で売られるのは、ヨルガオと呼ばれる“ナス目、ヒルガオ科、サツマイモ属、ヨルガオ種 ”
という代物のようで、最後に干瓢となるウリ科のユウガオの花ではない。似て非なるので念のため。
朝顔市では屋台のソースやら、醤油の芳しき香りに押され気味とはいえ、
暮れゆく喧噪のなかにその気高さを保っているユウガオ、いや、ヨルガオか…
闇に浮かぶ夕顔の花 ヨルガオ?
『源氏物語』五十四帖の第四帖に『夕顔』が登場。
光源氏が17歳の夏。乳母を見舞う折の出来事だった。
垣根に咲くユウガオの花に目を留めた源氏と、邸の住人との逢瀬が物語になっている。
源融の旧邸六条河原院が舞台だとされる何某の院でのこと。
邸の住人、夕顔と共にいた光源氏は女の霊の恨み言に遭う。
そのまま人事不省になる夕顔。そして、明け方には息を引き取るという悲劇が起きた。
夕顔は頭中将の側室で、玉鬘という姫がいたが、源氏は知る由もなく
『帚木』巻で語られた“雨夜の品定め”で、“常夏の女”として登場するその人であった。
ユウガオは まさに佳人薄命な女性を表すにふさわしい一夜限りの花だ。
能では『源氏物語』の「夕顔」の巻を題材にして『半蔀 』という曲がある。
源氏と夕顔との出会い、恋慕の情を美しく描く。
舞台上に蔓が絡み、瓢箪が下がる半蔀の作り物が登場。
小ぶりに白い花も付き、まさにそれはユウガオだ。
これに対して、『夕顔 』 という曲も在る。
荒れ果てた河原院での怖ろしげな夕顔の死を描き、旅の僧の弔いがそれを救うのである。
この世の苦悩から解放され 穏やかな喜びを得る夕顔の様を静かに見せる。
迷いもなしや 東雲の道より 法に出づるぞと。
暁闇の空かけて 雲の紛れに 失せにけり。
明け方、白い花は静かに閉じていく 。
観世九皐会 7月定例会 『夕顔 』 のシテを 三余堂 勤める
投稿日 2013年07月01日 14:15:40
最終更新日 2013年07月01日 14:15:51
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