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2012年07月20日
ん?鵺の羽根ッ!?
               ん?鵺の羽根ッ!?



いえいえ、そうではありません。

フランスから昨日やってきた鵞鳥の羽根です。空を飛んではきたのですが、羽根だけ。多分、御本体の方は食されてしまったのでは。そしてその肝臓は世界三大珍味のひとつである「フォアグラ」として、どこかの御仁の舌を喜ばせたかどうか...。

以前に筆記用具として使われていた葦のカラムのことを書きましたが、その後、ヨーロッパで筆記用具の主流となったのが羽根ペン。いつから使われ始めたのかはっきりしたことは判っていません。ただ、ロンドンのブリティッシュミューゼアムにある古代エジプトの絵画に書記が羽ペンを使用している絵があります。 鵞鳥の飼育自体は地中海沿岸地域ではめずらしいことではなく、古代ギリシャやローマ人たちも飼育していました。

恐らく、ローマ字の根源であるローマンキャピタルの発生、文字を書き残すためのパピルスが羊皮紙へと移行していったことなどと関係して羽根ペンの需要が増加していったのではと思われています。

9世紀ごろからアラビア人によって少しづつ使用され始めた金属の酸化作用をベースにしたインクが、酸化鉄とタンニンを合わせて作るゴールインクというものになり、12世紀にはヨーロッパに広がりました。このインクの導入が羽根ペンの使用を一般化したとされています。


ん?鵺の羽根ッ!?  
ん?鵺の羽根ッ!?  画像はクリックすると大きくなります。
     鳥の羽根なら何でもいいかというと、耐久性や柔軟性などから鵞鳥、白鳥などが一般的で、さらに風切り羽根という翼の先の羽根5本が適しています。この風切り羽根は自然に落ちることは無いので、地面に落ちている羽根では耐久性の面からいってペンには不向きです。あ、あそこによく落ちてるから拾って....というわけには残念ながらいきません。また、翼の左右で羽根のカーブが違うので、右利きには左の翼の羽根のほうが手になじみます。 この羽根の先を文字を書きやすいように削ってペンにするのですが、詳しい削り方はまたのお楽しみに!



ここでちょっと豆知識。「羽」と「羽根」の違いをご存知ですか?羽は翼のこと、羽根は羽から離れて一本づつになっているもの、英語ならウィングとフェザーの違いです。日本語では発音が同じなのでつい漢字を間違えがち。 

そして、La plume d’oieラ・プリュム・ドワこと鵞毛庵は、この鵞鳥の羽根ペンからきています。

鵞毛庵は今年の夏も日本カリグラフィースクールのサマーセミナーで羽根ペン講座を担当します。
投稿日 2012年07月20日 0:26:04
最終更新日 2012年07月20日 0:26:04
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