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2012年01月01日
壬辰の春に
カテゴリ : [案内望遠鏡]
恭頌新禧


壬辰の春に


2011の大晦日の東京はこの季節らしい一日であった。
おテント様が真っ青な空に輝いて、乾いた冷たい空気に街路樹のイチョウが舞っていた。
四人の童子が、“おっと うつむきゃ涙がこぼれる いつでも楽観 上向き童子 ”と、空を仰ぎ
今日のこの日を待っていた。

2012年 1月1 日。壬辰の元旦を迎えた。

正月の能の初会には 『翁』が演じられる。 
これは能の成立に先行して行われていた、猿楽の本来の役目のものであった。 
役者が翁面をつけ、天下泰平を寿ぎ、国土安穏を祈って翁の舞を舞う。
現行の形は世阿弥時代の形態を伝えていると云われ、今も、上演前は精進潔斎、別火をする。
『べっか』と読む別火は、日常用いる火による穢れを忌んで、炊事の火を別にすることだ。
翁に際しては、神職が神事などに際して行う別火を行い、開始直前に鏡の間での杯事をする。
翁は舞台上でも、正面に深々と拝礼をし、所定の場所に着座すると おもむろに 
 “とうとうたらりたらりら。たらりあがりららりとう。” と発声。
 “ちりやたらりたらりら。 たらりあがりららりとう。”と、地謡が答える。
判らんような、判らんような… が、わかったような 翁の初頭の詞章である。
これは神事なのである。
“およそ千年の鶴は。万歳楽と謳うたり。また萬代の池の亀は〜
                     天下泰平。国土安穏。今日の御祈祷なり〜 ” と 翁が謡う。

陽を仰ぐ童子も、地を舞う翁も届けとばかりに思う願いは同じ。


    薮内佐斗司 作 上向き童子 壬辰の春に 於西荻地域区民センター



投稿日 2012年01月01日 0:00:20
最終更新日 2012年01月01日 0:00:20
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