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2007年04月20日
春の夕暮れ来てみれば
 入相の鐘に花ぞ散りける、とはなんとも優雅ですが......怖い怖い女性のお話、「安珍清姫伝説」を題材にした「道成寺」の一節。清姫に思いを寄せられ、追いかけられて鐘に身を隠した僧安珍。その鐘ごと清姫に焼き殺されてしまいます。 おおこわッ!!
 能「道成寺」は、その後日譚で、久しく鐘のなかった紀州道成寺で鐘の再建供養が行われることに。その際、女人禁制となっていたのになぜか忽然と一人の白拍子があらわれ、舞を舞ううちに鐘に飛び込んで落としてしまいます。この白拍子が清姫の化身だと気づいた時にはもう遅い。祟りで落ちた鐘ならば、法力で持ち上げようという僧侶と大蛇となった清姫の怨念の戦い。最後はもちろん法力に敗れて大蛇は川に飛び込んで消えうせます。

 今月は、この「道成寺」より同じ題材でまったく違うタイプの作品をふたつご紹介します。

 こちらはシテの装束から着想してdojojiの文字を重ね書きしてデザインし、詞章の部分はゴティックの草書体をアレンジして仕上げました。


                春の夕暮れ来てみれば
                         「道成寺」 65x50  ©La plume d’oie 鵞毛庵 2003
                   Au crépuscule de printemps, suis venue voir au son de cloche du coucher,
                   fleurs au vent se dispersent, fleurs au vent se dispersent, fleurs au vent se dispersent

                   春の夕暮れ来てみれば入相の鐘に花ぞ散りける、花ぞ散りける、花ぞ散りける

こちらは自由書体によるもの。

春の夕暮れ来てみれば道成寺」 28x38 ©La plume d’oie 鵞毛庵 2007

 嫉妬や怨念を抱えながらも、散り行く花の美しさに惹かれている微妙な心を想像してみました。
怨念のかたまりとなっても、花を愛でる心はなくさないというところは、懺悔の気持ちの現れであるかもしれません。なんだか女性として共感してしまうのは
   おっと、アブナイ、アブナイ 

 しかし、美しい桜はそれ自体、すでにじゅうぶん妖気を放っており、パリでもっとも妖しい桜「白妙」の花満つ折、吸い込まれそうな異次元空間をかもし出します。この幹、大蛇がくねくねしているような、いないような。。。。
                パリ植物園にて ©La plume d’oie 鵞毛庵 春の夕暮れ来てみれば
投稿日 2007年04月23日 5:28:03
最終更新日 2007年04月23日 5:28:03
修正