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2014年11月01日
棕櫚
カテゴリ : [案内望遠鏡]
棕櫚
            … 棕櫚のきりぎりすが …

早朝の虫の音もさすがに弱くなり、庭一面に咲きほこっていたホトトギスも、結んだ実の
ふくらみばかりとなった。 今年もいよいよ霜月である。
玄関の香炉に鈴虫か、きりぎりすか、いや 蟋蟀か… キリハタリチョウか…
まっ、くつわむしでも がちゃがちゃでも 松虫でもいいが 兎も角 虫一匹鎮座。
棕櫚の葉で作ったもので、知人からの到来物とのこと。
その尊顔を拝せんと目を近づけて じぃっ〜と覗き込む。


シュロは乾湿、陰陽の土地条件を選ばない為か、結構古くからの庭には植わっている。
子供の頃は、大きくなると椰子の木になると思っていたが、一向に丈が伸びない。
東京は寒いので、南方の植物は大きく育たないのだと勝手に考えていた。
まぁ、当たらずとも遠からず、椰子の仲間には違いない。
そんな棕櫚は棕梠とも書くが 専らシュロ縄やシュロ箒のほうで馴染みだったような気がする。
パイナップルの皮に、ながーい髭がモサモサと生えたような樹皮。それは縄やら箒は勿論、
椅子やベッドのクッション材で、古い家具の端から顔を覗かせていた。
何とも古めかしい香りがする話である。

シュロ縄は植木職には必携だったが、昨今は合成の棕梠縄も巾を効かせる。
確かに朽ち果てず丈夫だろうし、価格面も違うのだろう。庭の手入れに来た親方が、 
こんなものが最近あると見せてくれた時は、互いに苦笑いしたものであった。

箒にしても イイものは結構な贅沢品である。所謂工芸品という事だろう。
手入れ方法次第で15〜20年以上使用できるという。
勿論、年に一度くらいは水で洗って 手櫛、ブラシッング、日陰干しに椿油でのお手入れと 
なかなかの心遣いが必要なようだが、それだけの価値はある。
棕櫚の皮をぐるぐる巻いてまとめて、それをいくつか束ね、水に浸して柔らかにしたところを
手で一本一本ほぐして、梳いていく。そして、毛先を揃えたり、乾燥干しをしたり。それから 
洗って干して、椿油で整えて…   そんな御大層な箒は使うところを 先づ掃除せにゃ。

秋の虫になった 深い緑の棕櫚の葉を眺めつつ 
            そういえば 棕梠の荒神箒は何処へ行ったやら…








投稿日 2014年11月01日 22:00:51
最終更新日 2014年11月01日 22:01:30
修正