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2013年09月12日
女房言葉
カテゴリ : [三余堂月次]
九月案内望遠鏡は自生の桔梗に お目もじ叶わずと結んだが、 
この言葉 “ おめもじ ”はそもそも、女房言葉で御所に仕える女房が使い始めた
仲間内での言い回しである。 職業と結びついた業界用語とでも云おうか。
室町初期ごろから使われたようで、丁寧な言い方として言葉の頭に “お”をつけたり、
語末に“もじ”を付けて 物の言い方が穏やかで角が立たない様にしたわけである。
内裏の中で 挽き目鉤鼻女房たちが 袖口で口を覆いながら おほほほほ… と
優美で上品な言葉を 使ったということであろうか。
後には 将軍家に仕える侍女、大名、武家、町家の女性へ、さらには男性へもと広まった。

   『今日の御采はおかべにおかかをかけて、おみおつけの身はひともじか。

早い話が 今日のおかずは冷奴に削り節がかかって、長ネギの味噌汁ってこと。
おみ御付け、おみ足、おみ御手、おみ帯、と “おみ” も女房言葉で、
丁寧な接頭語 “お” のおなかも、おならもしかり。結構、普段の生活に馴染んでいる。

圧倒的に食に関しての言葉が今も生きていて、おしゃもじ、おすもじ、
おこわに おじやに おからに おでん。
まだ真夏日になる昨今ながら、コンビニでおでんのセールをしていた。
なかなかの人気で、レジ傍の鍋でいい匂いを放つ。で、ついで買いを誘う。
おでんは本来、串挿しにした豆腐などに味噌を付けて焼いたもの意で、田楽焼きを指す。
が、焼かずに煮て調理する煮込み田楽が普及。 今や煮込み田楽がおでんとなった。
美味しいおでんの季節は確実にそこまでやって来ている。
ところでこの “おいしい” も女房言葉。
“いし”という古語、好ましいとか、優れるという意味の形容詞に、接頭語の“お”が付いて
“おいし”となった。 味の良さを丁寧に言おうと、“おいしい”という言葉ができたと云われる。
       『 はい、このおでん、大変に おいしゅうございます〜 』
            『 おすもじも 結構な時季になりました… 』









 


投稿日 2013年09月13日 0:38:48
最終更新日 2013年09月13日 0:38:48
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