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2013年05月01日
エゴノキ
カテゴリ : [案内望遠鏡]
例年5月1日は若葉の香りが満ちみちて、夏への一歩がそこまでと感じるものだ。
不順な天候に幾分慣れてきた昨今、巣作りする野鳥より鳥インフルエンザ、
柔らかな新緑の椿より、それにつくチャドクガの方が気になるようで情けない。
過去に鵞毛庵で紹介されているが、フランスで 5月1日はスズランの日。
海流の関係で暖かいとはいえ、パリの緯度は北海道稚内よりかなり北であるかから
もっと 東京でも至る所に強く丈夫なにスズランを見かけてもよさそうだ。
最近でこそ おしゃれな花屋の店頭にスズランの切り花が並ぶことがあるが、それは
観賞用に栽培されているドイツスズランだろう。日本の野生種より大型で、良い香りがする。
鉢植えを放っておいても結構花をつけるが、群生させて花を観るには余程の条件が要りそうだ。

引き換えて、地面の近くから目を頭上に転じると そこには白い花が鈴なりに咲きだしている。
エゴノキである。 落葉の小高木で、雑木だ。 公園などでもよく見かける。
実を食べると喉や舌を刺激してえぐいので、転じてえごの木となったという。
毒だと教えられていたが、実の皮に含まれるサポニン成分の作用らしい。
水に溶かすと石鹸のように泡立つというし、その麻酔効果で魚取りに使ったりするそうだ。
ヤマガラの好物ということになっているが…  
もっとも、ヤマガラの御馳走になる秋には種子中のエゴサポニンは減少するそうである。


今年も開花 エゴノキ 三余堂のエゴノキ



チシャノキのほうが、耳馴染みのいい御仁もあろうと思うが、『伽羅先代萩』に登場する
ちさの木、“萵苣の木”のことである。
「知左(ちさ)の花咲ける盛りに愛(は)しきよしその妻の子と朝夕に 笑みみ笑まずも」
(知左=エゴノキ)
と 万葉集で大伴家持が詠っているのだから古くから親しみある木ということだ。

屋根ほどの高さで 今頃、横枝から出た小枝の先端に房状に白い花を下向きに多数つけるが、
沢山の落花に初めて花が咲いているのを知ることさえある。緑の中に芳香を放つ頭上の鈴蘭。
新梢にエゴの猫足油虫と呼ばれる「虫瘤(むしこぶ)」ができることがある。
6月を過ぎてエゴノキの枝の先の方を見入ると、花でも実でもないバナナの房の束のようなもの
を見ることがある。 アブラムシによって形成される黄緑色の虫こぶ。
枝先に産卵、寄生するので、その部分が肥大化するらしい。 
初めて見つけた時は正体不明の猫の足のような固まり、 決して気持ちは良くなかった。
この虫瘤、適度なおてんとうさまの陽を浴び、水分補給も充分、生き生きとした幹を持つ
環境の良い場所のエゴノキに発生。 少し日当たりが弱く、幹も力強さに負ける方の木には
養分が少ないと見たか、 何十年 一度も虫瘤をみない。
こぶの主、アブラムシは、8月には次の寄生先イネ科のアシボソに引っ越すと言う。

暑さの峠を越える頃、ふわふわと しろい綿が飛ぶように行くのを 見送りながら 
来年は御免蒙りたいがなぁ と。    しかしこのご時勢、共生ということなにるも致し方なし。







投稿日 2013年05月02日 8:18:14
最終更新日 2013年05月02日 9:45:21
修正