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2009年09月20日
いにしえの色
昨日小津和紙博物舗の文化教室でのカリグラフィーの一日講習の後、すぐ近所の三井記念美術館で「夢と追憶の江戸」 を見てきました。慶応義塾の高橋誠一郎浮世絵コレクションです。その多くが青や赤や黒がくっきりととても鮮明な色を保っています。

ちょうど先週末、中世ヨーロッパのレシピでゴールインクを作ろうというワークショップを開いた庵主ですが、その前の9月6日にテレビ番組
「ザ!鉄腕!DASH!」 で天然顔料の色を探すというのがテーマになっていました。昔の絵から赤、黄、青、緑、紫、白と黒の7色選んでその天然材料を見つけるというもの。そこで黒色は写楽の役者絵「市川蝦蔵」の髪の毛の「黒」。文献を紐解いたり専門家に聞いたりしてたどりついたのが「五倍子(ごばいし)」。おお、なんというタイミング!

いにしえの色  
三井記念美術館「夢と追憶の江戸」のパンフにある写楽の役者絵 まさにこの絵が[ザ!鉄腕!DASHI!」で黒と黄色、白の見本に選ばれていました。これが展示されるのはこの展覧会の後期


ゴールインクのゴールとは、英語で虫こぶのことを指し、ブナにできる没食子(もっしょくし)やヌルデにできる五倍子がそれにあたります。この虫こぶはタンニンを多く含み、それを抽出して、酸化鉄と合わせたものがインクになります。日本では古来から染料として五倍子を使っており、鉄漿(おはぐろ)の原料として知られています。ぬぬぬ?鉄漿とゴールインクは同じもの??そうなんです。染料以外に、没食子や五倍子は漢方薬としても使われていて、止血、止汗、下痢などに効能があるとか。(でもインクはくれぐれも飲まないように!)

ゴールインクの材料 硫酸第一鉄、粉砕された五倍子、丸いのは没食子いにしえの色

このインクは書き始めは薄めの色合いですが、時間が経つと鉄が空気に触れて酸化し徐々に濃くなっていきます。中近東あたりで発祥し、ヨーロッパには12世紀ごろ広まって、古文書の殆どがこのインクで書かれています。
本来は羽ペンで羊皮紙に書くところですが、19日付記事にも掲載した「清経」など普通の紙の作品にも庵主はこのインクを時々使用しています。


いにしえの色

La plume d’oie© 鵞毛庵 2007 能「葵上」部分

三井記念美術館の展示はなかなか見ごたえあり、いにしえの色をたっぷり満喫。

「土蜘蛛」、「安達原」など能の曲目を題材にした浮世絵もいくつかありましたが、題材として選ばれているだけで、どれもなぜかおどろおどろしいものばかり。「景清」も恐ろしい形相で...。
しかし、それはこれらの曲目や話が当時ポピュラーな題材だったということでしょうけれど。
投稿日 2009年09月20日 11:20:06
最終更新日 2009年09月22日 9:37:21
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