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2013年03月01日
弥生の空は
カテゴリ : [案内望遠鏡]
“いよいよ ますます 生い茂る”季節となった。
陰暦三月は弥生。弥生と書いて いやよい。弥はいよいよで、生は草木が芽吹くこと。
三月の季語に炬燵塞、こたつふさぎ、というのがある。
まさにその通り、この時期は日の出も早くなり 明るい朝が春の息吹を感じさせる。
一方、大陸の砂漠やら、乾燥した地域の塵が飛んできて、辺りがいやに埃っぽい。
いわゆる黄砂である。
強風で上空に巻き上げられた砂塵の嵐は海を越えてやってくる。
空が黄褐色に煙り、うっすらと そこ、ここに積もり、
窓が少しでも空いていようものなら容赦なく 家中が赤土のほこりに塗れる。
気象台などでは、目視で確認した時を、黄砂とするという。
勿論、気象衛星などの観測装置で、科学的に黄砂の分布状況を観測、
光学的に厚さや粒径分布を観測したり、人工衛星の画像を解析しているから
しっかりと 飛散地の元が何処だか判るというものだ。

黄砂情報提供ホームページというのを環境省と気象庁で開設しているから
季節の風物などと云っている場合でない状況を知らされる。
ことに 昨今の状態は他要因も加味されて深刻になった。 

日本では7万年前の最終氷期にはすでに 黄砂が飛来していたらしい。
7万年前から6万年前頃、風によって運ばれたことが、堆積した砂や塵から分かる
とのこと。最終氷期の初め頃は現在の3、4倍も砂塵が多かったと推定されるそうで、
とてもじゃぁないが、マスクをしたぐらいでは外に出られない。
更に堆積物を分析すると、約7000万年前から、黄砂が発生していたという。
あまりの数字の大きさだが、人がいない頃から砂塵は飛んできていたという事だ。

殷代の甲骨文字には「霾」と云う字が発見されていて、黄砂の事だとされている。
大陸ではその昔々、「塵雨」とか「雨土」「雨砂」「土霾」「黄霧」などと、
呼ばれていたらしい。  まさに読んで字の如し。
日本では、「泥雨」「紅雪」「黄雪」などの記述が江戸期あたりから見られるように
なったという。 霾(つちふる)、霾曇(よなぐもり)、などの季語で示される黄砂は
なんとも趣ある言葉に衣替えしているが、砂塵に変わりはない。
春によく見られる霞や、夜の月を霞ませての朧月夜だって、多分に黄砂の影響。

とはいえ、なんとも どんよりと靄った空が 弥生の空で
見わたす限り かすみか雲か ということだ。
奇しくも今日、関東は春一番となり、砂塵も舞っている。


弥生の空は

©La plume d'oie 鵞毛庵 2007 能「大原御幸」より
Ne sont-ils pas un dernier souvenir des fleurs éffeuillées ?
遠山にかかる白雲は 散りにし花の形見かや

ギャラリーUSHINにて 3月6日〜17日 
桜 KAWAII Craft exhibition に 上記作品展示いたします。
投稿日 2013年03月01日 19:09:40
最終更新日 2013年03月01日 19:09:58
修正