http://nogakusanpo.maya-g.com
記事移動
2015年12月01日
カテゴリ : [案内望遠鏡]
三十年前の別冊 “太陽” 三十年前の別冊太陽

何気なく本棚に並ぶ、別冊太陽49号を手にして ほう〜とか、へぇ〜とか見入った。
三十年前の発行、春号『子供遊び集』である。
先ず、裏表紙の花園万頭の広告。
あづきと栗の餡を白いかるかんで挟んだ羊羹型の菓子である。
砂糖のべたっとした感触が泡のように軽くなって、口の中にひろがる
“あぁ〜 あのかるかんの甘味が…” と、思いながら扉を開く。

三十年前の別冊太陽

そこには、ワイルド・ターキーの宣伝。バーボンウィスキーである。 750ml .00也。
さて、第一頁。 と云っても 最終頁の編集室からのコメントだが、前号の別冊太陽
48号『女優』に寄せた読者の便りがあった。
その時の表紙は、過日死去報道があった女優の原節子。
左斜め下から上半身を写している。
目鼻立ちがはっきりとして、その様子から大柄で、しかも、しっかりした婦人に見える
女性ではなく、“ご・ふ・じ・ん” といった感じだ。

              三十年前の別冊太陽

その左隣の欄には『子供遊び集』の編集者達の一言。
―明治、大正、昭和― と、副題があるので、それぞれの思いが重なる編集後記
であるが、なんせ今から三十年前のことである。
リリアンが好きだったという編集者はもう退職しているだろうか…
などと 本編とは別のところに興味深い記事や広告を見る楽しみに浸った。




この『子供遊び集』に見世物研究家として、古河三樹氏が執筆している一文に
よると、明治維新の後武芸家が興した見世物に撃剣大会というものがあって、
大正時代まで残っていたそうだ。 武芸大会ということであったが、かつての
真剣味を帯びた撃剣ではなくて、型を見せるだけのショーになってしまっていた由。
勇ましい看板に胸躍らせて木戸をくぐった少年は、期待した真剣の閃きはなく
がっかりしたとのこと。
やはり、看板に踊らされて木戸をくぐったものに女相撲があったという。
少年が木戸銭を払って入れてもらえたのかなぁ、とも思うが。
〜髪は相撲銀杏、シャツを着て、猿股で曲線を包み馬簾の下げのある締め込みを
付けていた〜 と書かれている。これも少年には少々がっかりの姿であったろう。
しかも、女力士が取り組むわけでなく、俵を持ち上げるなどの力自慢を見せられ
たとのこと。
〜江戸時代は勿論、明治中葉までは、女相撲はエロスの香り豊かな独特の
見世物で、本場の東北や北海道では昭和になっても随分人気を集めていたが、
さすが、帝都東京はこの手の興行には極めてやかましかったのである。〜
とも書かれている。

筆者の古河三樹氏は、1901年(明治34年)生5年(平成7年)没の長命で、
『見世物の歴史』(雄山閣出版、1970)の著者。   ご存命なら 115歳。
戦前平凡社に勤め、その後、四谷駅上の古河書店主であったという。30年前には
思い出として書いた、大正の頃の少年の遊び。『見世物小屋を覗く』は 
すっかり歴史になった。 
 













投稿日 2015年12月01日 0:53:44
最終更新日 2015年12月01日 0:54:32
修正
2015年12月12日
カテゴリ : [三余堂月次]
師走になってやっと黄葉した銀杏の葉を温かい風が吹き飛ばす。
真夏日にならんとする気温を暮れになって経験するとは、いやはや…
湿った暖かい風が南から吹き込んで、紅い葉や黄色い葉が庭一杯になった。
レースカーテン越しの陽で神経質に管理していたシクラメンの鉢は 
最近すっかり庭に出され、鮮やかな落ち葉に埋まりながら蕾をのぞかせている。


同様にすっかり四季を通して屋外の鉢物になったのが、シャコバサボテン。
一時は、どの家でも見事な花を付けて冬の窓辺を飾っていた。
シャコバサボテンはブラジル原産の多肉植物。
丁度、今頃開花するサボテンの一種で、1800年代半ばにブラジルで野生種から作られた。
日本では明治時代から栽培されていたそうで、人工的な園芸種である。
丈は20〜50cmにもなる。開花期は11月ごろから翌年の寒いうちだ。
よく似たものにカニバサボテンというものがある。これは葉のような、茎のような
茎節の縁が丸く、突起のあるシャコバとの見分けは容易につく。
花は似たようなもので、それらを交配させて、多くの品種が誕生したという。
シャコバサボテンの名の由来は葉の形が海にいるシャコに似ているからだそうだ。
茎の節ごとに一対の突起があって、これがシャコを彷彿とさせるというが はてさて如何に。
命名された頃はシャコに馴染があったのだろう。寿司ネタには必ず登場していた。

この鉢花、いつの間にか、クリスマスカクタスと呼んでいることに気づく。
クリスマスの時期に咲く花の名はこの方がふさわしい。が、デンマークカクタスとも
表示されている。近年はデンマークで改良された品種が普及したことによるらしい。
クリスマスでもデンマークでも、カクタスというのはサボテンという意味だそうで、
健気に暑さ寒さを庭で耐える鉢はたくましい限り。弛みない品種改良の賜物だろうか。
5℃以上あれば越冬は出来るというから、昨今の温暖化は年間を通して庭での生活を
快適にしているのだ。複雑な気分である。



シャコバサボテン



元々が人工種だからだろうか、環境の変化に弱い性質があった。
一度置き場所を決めたらなるべく移動させないようにと気遣い、室内の明るい窓辺、
しかもレースのカーテン越しの光を当て、夏は日陰で管理し、水やりを控え、
液肥で管理し… 誠に繊細な管理であった。
今やシクラメンも庭で毎年咲き続け、多分シャコバの名で売られたであろう鉢植えは
三十年以上の仲間となって玄関先を彩っている次第だ。








投稿日 2015年12月12日 8:35:37
最終更新日 2015年12月12日 8:35:37
修正
2015年12月20日
先月の記事でクリスマスの赤を取り上げましたが、もうひとつ、クリスマスのシンボルカラーというと緑があります。
そう、クリスマスツリーがその代表ですね。ツリーは一般的にはモミの木を使用されますが、これはやはり常緑樹ということから、永遠のシンボルとなっています。

ということは、もうすぐやって来る正月の門松も同じような意味合いから用いられています。古くは中国は唐代においても、松が常緑で長寿を象徴することから門前に飾られたりしたものが、平安期以降、日本でも取り入れられたという節も。
昨今の住宅事情もあいまってか、普通のお宅に門松を見かけることが珍しくなってきていますね。

ヨーロッパ、とくにフランスを含む北の方では、新年の飾りとしてヤドリギがあります。これも常緑なこと、白い実がたくさんつくことから子宝など、やはり永遠、子孫繁栄の象徴となっていますが、古くはケルト文化に遡り、神聖視されていて、無病息災や邪気を払うとされていました。12月31日が明けて新年になると、吊るされたヤドリギの下でキスを交わして幸せな一年を願う風習もあります。場所によっては豊作を願うことも。
普段は他の木に寄生してちゃっかりもので、嫌われものですが、お正月だけは特別扱いです。



            とこしえのシンボル

©La plume d’oie 2015 
エピファニー(キリストご公現祭1月6日)に雪が降ると、納屋がいっぱいになる。
フランスの言い伝え。正月に雪が降るとその年は豊作であるということ。
ヤドリギのブーケの下で雪だるまに興じるお猿さんたち。

     とこしえのシンボル

今年も能楽さんぽをご愛読ありがとうございました。
みなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。

投稿日 2015年12月28日 11:25:35
最終更新日 2015年12月28日 11:25:35
修正