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2013年06月21日
  先日、国立新美術館に「一角獣と貴婦人」展を見に行き、6枚のタピスリーと再会しました。パリのクリュニー美術館(中世美術館)の所蔵で、他所に貸し出されるのは非常にめずらしいことです。今回はタピスリーを修復したこと、美術館を改装中ということで、特別貸出と相成った様子。まさか東京で再会できるとは!

  この6枚連作のタピスリーはデザインはパリでなされたとされていますが、実際に織られたのはフランドル、つまり、北フランスからベルギーあたりで、その特徴のひとつである細かな草花文様が特徴。写本装飾とちがって実物にかなり近い姿で描かれていています。日本語では千花文様と呼んでいるようですが、とにかく沢山の花が登場します。40種類は確認されているとか。その名の一部を揚げると、オダマキ、ジキタリス、マーガレット、スミレやパンジー、ツルニチソウ、ハナダイコン、豆科の花などなど。オダマキというと、静御前の「しずやしず しずの苧環...」を思い浮かべてしまう鵞毛庵ですが、品種には西洋種もあり確かに今頃の時期に森など散歩すると咲いていたような。ソラマメはどんな土地でも育つことから豊饒のシンボルとされていたので、ここに登場するのも納得。などと、あれやこれや思いを巡らしました。

  少し前に東京の道端にはハナダイコンが咲乱れ、スミレやパンジーもあちこち見かけて、1500年頃のタピスリーに描かれた花の一部が今、ここにも沢山咲いている!となんだかワクワクも。

花いろいろ

  今回の展示では某TV局制作のデジタル資料がとてもよくできています。それにはちょっと劣りますが、こちらをご参考までに。


もうひとつこちらはクリュニー美術館制作のビデオです。 

 この記事のUPをお待たせしている間に掲載した画像は1900年ごろフランスで刊行された花の図案集にある夕顔とおぼしきもの。扇や能装束に描かれている夕顔に似ているとも似ていないとも。花の姿はいろいろということで。

               花いろいろ
                能[夕顔」より 山の端の心も知らで行く月の... (c)La plume d'oie 2013

7月は三余堂こと五木田三郎が「夕顔」をつとめます。
投稿日 2013年06月21日 12:10:16
最終更新日 2013年06月21日 12:10:16
修正
2013年06月20日
ただ今編集中につき、しばらくお待ちください!

no subject
投稿日 2013年06月20日 0:01:38
最終更新日 2013年06月20日 0:02:51
修正
2013年06月12日
カテゴリ : [三余堂月次]
今月は旧暦で水無月、 みなづき と呼ぶ。
現在の暦でも6月の別名として用いるが、旧の暦とは時季がずれる。
水無月の由来には諸説あって、聴く度にこれがまた混乱の種だ。
旧暦では6月下旬から8月上旬頃が 水無月に当たるので、文字の通り、
梅雨が明けて水が涸れて無くなる月である。
しかし、田植が終わって田んぼに水が必要な月なので、「水張月(みづはりづき)」
「水月(みなづき)」で、水無月となったとする説も有力だそうな。
だんだんに 訳が判らなくなってくる。
田植を仕終えた月で「皆仕尽(みなしつき)」、又、水無月の「無」は「の」という意味の
連体助詞「な」で、「水の月」だという説やら…
「梅雨で天の水がなくなる月」だの、「田植で水が必要になる月」だのと 後付けで
勝手なことは言える。が、それぞれがアタラズトモトオカラズといったところのようだ。
兎にも角にも 六月が水無月。

一年の半分の水無月と、その一年の歳の終いの晦日に、罪や穢れを除く為の行事がある。
6月は夏越の祓 なごしのはらえ、12月は年越の祓 としこしのはらえ という。
701年、大宝律令によって宮中の正式年中行事に定められたというから 大神事であり、
単なる大掃除ではない。 この日には、朱雀門前の広場に親王、大臣ほか官僚が集って
大祓詞を読み上げ、国の民の罪や穢れを祓ったという。
当時は衛生意識が今のように高くはなく、環境も整わない状況だった。
易疫病流行などの予防に対処する啓蒙活動の一環として、季節的に必要に迫られた
意味の重い行事であったろう。 応仁の乱頃まで、百年ほどは盛大に行われたという。
その後衰退、江戸の元禄に再開して、裾野に広まったというから、社会背景を考えさせられる。
落ち着かない世の時こそ大祓いを願いたいものであるが…

時は下り、明治4年の太政官布告で、明治新政府は「大宝律令」の「大祓」の旧儀を再興し、
全国の神社で「大祓」が行われるようになったという。お上からのお達しであった。
ご維新後の日本の姿が垣間見え、これまた時代背景が感じられる。
戦後は祭政が切り離され、「夏越神事」「六月祓」などの称も復活して現在に至るという。
この時期、無病息災を願っての茅の輪くぐりが時折ニュースで流れる。これが夏越の祓である。
夏越祓には「水無月」という菓子を食す習慣があるという。
白のういろう生地に小豆を乗せた三角の生和菓子。
小豆は悪霊祓い、三角の形が暑気払いの氷を表しているのだそうだが
云われてみれば初夏の涼味として口にしていた甘味である。

この時季には上演の観世流の能に “水無月祓 ”という曲がある。
下鴨神社の夏越の祓で 恋慕いながらも別離した男女が再び会うという大団円の
作品として描かれているが、 賀茂神社の「夏越祓」が有名であったことは、    
 
    風そよぐ奈良の小川の夕暮れは 禊ぞ夏のしるしなりける
 
と 百人一首の藤原家隆の作からもよくわかる。
今年の“水無月祓”は 能として舞台で ご高覧願うも一興か。


水無月祓 鴨川の後瀬しづかに後も逢わん 妹には我よ今ならずとも  能 水無月祓 より   
                                                                  阿香 書く






 水無月祓 2013.08.11. 於  観世九皐会定例会

投稿日 2013年06月12日 14:55:58
最終更新日 2013年06月12日 14:56:23
修正
2013年06月01日
カテゴリ : [案内望遠鏡]
時は舒明天皇9年2月のこと。
都の空は耳をつんざき、身体を突き抜けるようなすさまじい音が鳴り響く。
東から西へ“何か” が流れていった。
「星だ!星だっ!大きな星がながれたぁ〜。いやぁっ???」

「弾よりも早く」「機関車よりも力は強く」
「ビルじィングなどは ひとっとび」
「なんだあれはっ」 「鳥だっ」 「ロケットよ」 「あっ、スーパーマンだっ!」

「いやいや、あれは天狗である。天狗の吠える声が雷のように響きわたっておるのだぁ!」
と、唐から帰国した僧の旻が言った。と、『日本書紀』にあるとかないとか…
スーパーマンの下りはともかく、飛鳥時代の日本書紀に天狗は流星として登場。

天狗は大陸において流星を意味した。
その猛烈な速さと力強さ、大地を震わす凄まじい音で落下する火の玉を
咆哮を上げて天を駆け降りる犬の姿に見立てたのであろう。
わが国でそれ以後、文書で流星を天狗と呼ぶ記録は無いという。
大陸で天狗は天から地上へと災禍をもたらす凶星として恐れられた。
時代が下り、平安の時代に登場した天狗は妖怪になっていた。

山伏の装束で赤ら顔、高い鼻を持ち、翼があって一本歯の高下駄を履き
葉団扇を持ち自在に空中を飛翔する。そして、悪巧みをする。
これが天狗ということになったのは中世以降のようだが、多くは僧侶の形で、
時として童子や鬼の形をとることもあったらしい。また、空飛ぶ天狗は鷹だの鳶だのにもなる。
その時々の 人の気持に沿って変幻自在。 伝説上の生き物といったところか。


能 善界にこんなくだりが描かれている。

唐の国に天狗の首領がいて、名を善界坊と言った。
さすがに首領、魔道へ慢心した多くの僧たちを引き入れたそうな。  さぁてお次は…
邪魔くさぃ!海の向こうの仏法をなんとかするかぁ〜 と海を渡る。
愛宕山の大天狗太郎坊の知恵で、比叡山の僧に目を付けた。
勅命によって都へ急ぐ僧の前に、雷鳴と共に現われる善界坊。
なんとか魔道に引き入れよう! と頑張った。
が、仏法を守護する不動明王はがんばった。諸神も皆々頑張った。
う〜む。 多勢に無勢、善界坊、とうとう退散の憂き目となる。
                         せっかく 海を越えて来たんだがなぁ。
愛宕の太郎坊の助言はどうもなぁ〜 と首を傾げたかどうか。 




能では「大ベシミ」という面が天狗を表す。
大きく目を見開き、口を真一文字に閉じた強い表情。力を内に秘めて強い 天狗を顕わしている。
あの 後白河法王と住吉大神との天狗問答に
    「もろもろの智者学匠の、無道心甚だしい者が、死んで天魔という鬼になり申す。
     その頭は狗、身体は人身にて翼が生えており、前後百年のことを予知する通力を有し、
     空を飛ぶこと隼のごとく、僧侶なれば地獄には堕ちず、無道心故往生もできず、魔界の
     天狗道に堕つ。無道心の僧、高慢の学匠は皆天魔となり、天狗と呼ぶ。」
とあり、大智の僧は大天狗、小智の僧は小天狗に成るという。
因みに 日本の八大天狗は 愛宕の山の太郎坊、比良の峰の次郎坊、飯綱三郎、鞍馬山僧正坊
大山伯耆坊、彦山豊前坊、大峰山前鬼坊、白峰相模坊。    其々が謡でも馴染みである。

数百年の前、天狗様は当時の流星ならぬ スターでもあったのだろう。







観世九皐会6月定例会にて三余堂 能 善界 地頭を勤める
投稿日 2013年06月02日 12:13:56
最終更新日 2013年06月02日 12:13:56
修正