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2013年04月01日
カテゴリ : [案内望遠鏡]
春霞か、花曇りか、黄砂か、PM2.5か。首都圏内のJRの車窓から見える景色はぼっーとしている。
車内に目を移すと、「まど上」という広告が目に入る。
手持無沙汰の折には恰好の読み物で、“へぇ〜 この駅で降りると そこへいけるのかぁ…” と、
その路線ならではの様子を強感じる。
「中づり」「まど上」「ステッカー」「ドア横新B」などと車内の広告にも種類があり、掲載期間も選べ、
企業や商品のニーズにあった媒体が利用できるというのが JR東日本のうたい文句である。
「まど上」は「中づり」と共に目につきやすい広告で、その路線利用者にターゲットを絞った効率的な
宣伝と云う次第だ。

東京メトロ東西線の車内。
『 国立公文書館 平成25年春の特別展   「近代国家日本の登場―公文書にみる明治―」』
 というのが 目に入った。
隣に 『 もらうと本が読みたくなる 』と、日本図書普及株式会社が図書カードの宣伝。
その隣は ECC外語学院が、『 いよいよ四月から!』 と、北野たけしセンセの顔で広告を打つ。
なんとも 春らしい爽やかな宣伝ばかりである。

春の特別展を入場無料ながら宣伝する国立公文書館は、独立行政法人で、国の行政機関などの
公文書を保存管理している。いわゆる 民間企業とは異なる。
例のワンクリックで削除となった三余堂月次で記事にしたことがあるので、何とか原稿を探り出して…
2009年の9月記事から一部を転載すると

       ………………………………………
《 内閣総理大臣が国の機関などから移管を受けた重要な公文書を、歴史資料として独立行政法人
国立公文書館が保存管理しています。》 と、ホームページにある国立公文書館。
資料の保存、データベース化、一般公開、インターネットの駆使と広く事業を行う。
重要な公文書の適切な保存と利用を図ることを目的とした施設。
公文書館は図書館、博物館と共に 文化施設として三本の柱の一つなのだそうだ。
                                                         ふぅ〜む

ヨーロッパでは、18世紀以来、近代的な公文書館制度が発達したという。
が、我国では戦後、その必要性の高い声に準備の末、 『公文書等の保存、閲覧・展示などへの利用、
公文書の調査研究を行う機関』 を目的として、昭和46年に国立公文書館が設置。   
40年になるとはいえ、結構 近年のことだ。

この設置に際して 重要な一部門となった内閣文庫。 
明治6年太政官に置かれた図書掛に始まり、明治18年内閣制度創始と同時に内閣文庫となる。
和漢の古典籍・古文書を所蔵する専門図書館となった。
その蔵書には、江戸幕府の記録等の公文書に類する資料も多いという。
平成10年にはつくば研究学園都市内に、つくば分館設置。
平成13年独立行政法人国立公文書館となる。
独立行政法人への移行後も 内閣文庫の所蔵資料は引き続き国立公文書館で保存されていて…
                                                      ふむ、 ふぅ〜む

この 国立公文書館のホームページ。時折 覗くと興味深いものを見つける。
今月のアーカイブを手繰っていくと 老人必要養草 ろうじんひつようやしないぐさ!に当たった。

ご存知、養生訓の著者貝原益軒、その弟子の 香月牛山 かつきぎゅうざん(1656-1740)の著。
対象は高齢者限定ときた。もっとも この時代 いくつが高齢者だろうか。
正徳6年(1716)に 出版された書で 高齢者がいる家庭のための家庭医学事典と…
三余堂 必携の書のような気がしてくる。
養老の総論、飲食やら何やらと続き、鬱屈した心を癒す工夫や高齢者特有の心理を具体的に
解説しているのが、本書の特徴。と、ある。
老人性のうつ病ということか。現代ならではの状況ではなさそうだ。
形体保養の説という項には 手足の屈伸やマッサージが血流を促し卒中風の患いなしと ある。
                                           ふむ、ふむ、 ふぅ〜む …
         ………………………………………




なんとも 車内広告に経費をかけさせては申し訳ないような性格の国立公文書館。
かといって、車内広告でこそ 知り得た国立公文書館。
が、この「まど上」広告、思わず車内掲載料の零の数を繰り返して数えてみた。
たいそうな宣伝費に応えて、たまには足を運びたい国立公文書館。
我、矢来能楽堂から東京メトロ東西線で三駅先下車となる。







投稿日 2013年04月01日 14:30:21
最終更新日 2013年04月01日 14:30:21
修正
2013年04月12日
カテゴリ : [三余堂月次]
桜が散り、若葉寒の東京で 只今 編集中!
投稿日 2013年04月12日 0:18:30
最終更新日 2013年04月12日 0:18:30
修正
カテゴリ : [三余堂月次]
あまりの早い桜に追いつけ、おいつけと頑張った木々。
小さな芽吹きの若葉が レースのカーテンのごとく 朝日を覆う。
柔らかで壊れそうな生まれたての葉は 甘い新緑の香りも運んでくる。 
遠くから静かに風の音をも伝える。
冷たく澄んだ空が青く輝き、 
常緑の枝には濃き淡きと緑の色が重なり合って 艶やかな装いを呈する。
その陰で役目を終えて枯茶になった落ち葉の季節でもある。

霞か雲か、海の向こうから黄砂が、若葉寒の空から光を奪う。 まだまだそんな時もある。
“春霞 たなびきにけり久方の 月の桂の花やさく ”
と 能 “羽衣” の一節でもこの季節の様子を知る。
能の謡ばかりでなく、囃子も初心の稽古で必ずお世話になる 一節だ。
必死で師について口をパクパクさせたり、手を動かしたりでは
意味なんぞどころでなく、かすみもへったくれもないだろうが 春らしい詞章である。


三保の松原に住む漁師。松の枝に掛かった美しい衣を発見。 うちへ持って帰ろうっと!
そこへ天女が現れて、『その羽衣を返してぇ。それがないと、天に帰れないの。』 とくる。
『?見つけたの僕だしぃ、名前も付いてないしぃ〜 』 
『え゛っ〜 でもぉ〜  それがないとぉ…』 てな次第で、天女の舞を見せて貰えれば
返してもいいかなぁ… と。 取引成立。
そこで天女、有難しとばかりのお喜びダンスご披露。
月宮の様子はこんなところなの、とやら、春の三保の松原ってとっても素敵なんて、
褒めてみたりしながらの舞いとなる。
そうこうしているうちに 彼方
の富士山へ舞い上がった天女。
あぁ〜  いつのまにやら霞にまぎれて 消えていっちゃった…



世界中何処にもあるという、所謂 羽衣伝説をもとにした能である。作者は判らない。
漁師は羽衣を返したら、舞を舞わずに帰ってしまうだろうなぁ、と、なんとも懐疑的であった。
すかさず天女に 『いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを』 と、切り返えされる。
深く意味蓄えられた言葉であった。
邪念なく美しい天女の舞がその意味をことさら深める。

若葉寒の冷え乾いた 大気に改めて思う。
    『疑いは人にあり、天に偽りなきものを』 を… 


(c)La plume d'oie 鵞毛庵 2003 春霞 たなびきにけり
能「羽衣」より
天津風雲の通い路ふきとじよ乙女の姿しばしとどまりて


投稿日 2013年04月13日 2:03:15
最終更新日 2013年04月13日 2:03:51
修正
2013年04月20日
ただ今編集中につき、しばらくお待ち下さい。

no subject

EXLIBRIS 蔵書票 (c)La plume d'oie鵞毛庵
La lecture, une porte ouverte sur un monde enchanté

読書とは、魔法の国への開かれた扉である。(フランソワ・モリヤック)
モチーフは「貴婦人と一角獣」より着想
投稿日 2013年04月20日 0:37:48
最終更新日 2013年04月20日 2:01:40
修正
毎年恒例になっている蔵書票展が今年もやってきました。17日から5月2日まで小手指のギャラリーUSHINで開催されています。BOOK EXHIBITION カリグラファーと銅版画家からの紙片 と 題し、毎年ご一緒している銅版画家の大野加奈さんとの二人展です。和とじ袖珍本「風姿花伝」カリグラフィー作品集やブックカバーなども合わせて出展し、お買い上げ頂いた蔵書票にはカリグラフィーでの名入れも致します。


蔵書票は、今回は本にまつわる格言に中世の写本の装飾からのモチーフを加えたものを中心に、近日日本で初公開となるパリのクリュニー美術館所蔵の「貴婦人と一角獣」のタピスリー(タペストリーは英語)に着想を得た蔵書票も数枚加えました。

貴婦人と一角獣



この「貴婦人と一角獣」のタピスリーは鵞毛庵がパリに住み始めた当初から馴染み深いもので、クリュニー美術館には何度も足を運んだものです。 タピスリーは6枚のシリーズで、15世紀末ごろパリで下絵が描かれ、フランドル地方で織られたとされています。その内容は貴婦人が一角獣と獅子を従えて人間の五感を表す5枚と「私の唯一の望みに」と書かれた謎の6枚からなり、どれも草花や動物が細かく描かれています。6枚目がなぜ謎かというと、まず他の5枚に比べてサイズが大きいとか、何を意味するのかなど、さまざまな解釈がなされてきているからです。4月24日から7月15日まで、東京の国立新美術館で、その後は大阪で展示されます。特設サイトがありますのでこちらをご覧ください。

今から10年ほど前ですが、「真珠の耳飾の少女」という映画を覚えている方もおられるかと。この映画は同名の小説の映画化で、あのフェルメールの少女の肖像画から着想を得たアメリカの小説家トレイシー・シュヴァリエの作品なのですが、このシュヴァリエ女史は「貴婦人と一角獣」のタピスリーを題材にした小説も書いています。謎の多いタピスリーがどうやって出来上がっていったか、依頼主と若い絵師や周囲の人間模様、タピスリーの工房の様子などが描かれています。日本語訳もあるようですね。

5月末には別のグループ展に参加しますが、その時にはこのタピスリーを題材にした6枚の新作も予定しています。それはまた追って...
投稿日 2013年04月20日 1:59:12
最終更新日 2013年04月20日 1:59:12
修正