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2012年05月20日
今月25日(金)から蔵書票展第二段です。

題して


「書票をほどく展」


蔵書票 第二段

出展者:大野加奈 岡部いさく 五木田摩耶 高橋好美 野口恵子
2012年5月25日(金)〜6月2日(土)
アートプレイスK 
11:00〜18:00 土日13:00〜19:00
水・木休廊  最終日18:00まで

出展者による蔵書票のほか、版画やカリグラフィーなどの作品や書票協会収蔵の蔵書票も展示されます。
日本書票協会のサイトには蔵書票の歴史やら技法やら詳しく載っています。


蔵書票 第二段


世界で現存するものでは最古の蔵書票といわれているヨハネス・クナベンスベルグの蔵書票です。俗称「ハリネズミの蔵書票」といい、「もしもこの書物を返さなければ、ハリネズミがあなたにキスをする」という意味の文が書かれています。15世紀半ばの版画。


本はきちんと返せ!ということなのでしょうが、20世紀前半のフランスのを代表するノーベル賞作家のアナトール・フランスの言葉に次のようなものがあります。
「人には本を貸すな。借りた本は決して返さないものだ。」
と、ここまでは、ま、実際に貸した本がそのままだとか、借りたままだとかの経験にうなずいている方も多いかと。アナトール・フランスはさらに次のように続けています。
「私の本棚の唯一所持している書籍は、すべて借りたものである。」
アナトールの父はパリのルーヴル美術館近くの書店経営者だったと思いますけど...

鵞毛庵は3月に引き続き、ラ・フォンテーヌの寓話シリーズなど蔵書票EXLIBRISの原画と、新旧取り混ぜてカリグラフィーの作品を出展、また、蔵書票をお買いあげ頂いた方には、カリグラフィーでイニシャルやお名前をお入れします。



蔵書票 第二段


Liber mihi opus est 私には本が必要である。
EXLIBRIS  (c)La plume d’oie 2012

いつまでも手元に置いておきたい本の見返しに貼ってみませんか?そういう本は特に誰にも貸さないように...
投稿日 2012年05月20日 0:02:03
最終更新日 2012年05月20日 0:02:03
修正
2012年05月01日
カテゴリ : [案内望遠鏡]
洋の東西の写本の話が続いた。
そもそも、字が読めなくては写本もへったくれもないのだが、読むとは…
文字になった言葉を正しく発音して、理解出来る事を云う。
だから、いくら大声で読めても文字を正しく記さなくちゃぁ駄目である。

読んで、書いて、意味が判ることを識字という。 
この識字能力は、現代社会では最も基本的な教養だが、全世界の識字率は、およそ75%だそうな。
識字率というのは一般に15歳以上の人口に対して定義されるそうである。
江戸時代の日本は、庶民の就学率、識字率はともに世界一だったというからすごい。
1850年頃、嘉永年間の江戸の就学率は、70〜80%もあり、いわゆる寺子屋で読書き算盤を学んだ。
これは、武家や豪商の子弟ばかりでなく、裏長屋の子たちも学んだということで、安定した社会に
育った文化の力であり、文字を介して物を識り、伝達することの意義を理解していればこその
親の涙ぐましい教育熱の賜物だ。
 
伝達手段の文字。いくら識字の力があっても、読める体裁になって初めて役に立つってもんで、
正しく、美しく書くことを求められる。
求められた文字は多くの人が読みやすく、書きやすい形を生む。そしてその形が指標となって
定着していくことになる。文字が何に書かれるか、どんな道具で書くか、目的は何かによって
威厳も、風格も生まれるし、装飾的にもなっていく。
一方、実用的な文字は速く書くことも要求される。
時間をかけて石に刻したり、大きく板に書いたりする文字でなく、手書きで速く書き留めなければ
ならない役人や商人の事務用の文字。
速さを求めれば、字の形は崩れ、省略が生まれ、省略化されれば新しい形へと変化していく。

遣唐使が大陸に渡って文化を掴み取ろうしていた頃、唐は楷書の時代だった。
その頃文字は結構乱れていたそうな。それだけ 実用化していたということでもある。
近年の我国だって、丸文字がどうの、こうのと云っている間に、若者の書体の変化はどんどん進む。 
どの字が正しいのか、訳が判らない状態は多分、古今東西同じだろう。
唐の太宗皇帝は、氾濫する文字の正誤を 顔師古(581年 - 645年)と云う学者に命じて整えさせた。 
唐代初期の欧陽詢、虞世南といった人の書は、すっきりと簡潔な字体で読み易い文字である。
その文字の正しさ、根拠を追求していくと はてさて、切りなくどんどんと時代を遡り象形文字の
ように魚のヒレまで書くことになっては…
まっ、少々、複雑な形が復活しながらも そこそこに整理整頓。
10世紀以降、宋の時代になると、木版印刷が生まれる。当時の印刷文字が誕生。
それは木を彫るとはいえ、見栄えのよい木版文字を求めて、却って画数が増えたという。
この印刷の文字が字典に使われて、字典体と云われるようになった。
18世紀になって清の康熙帝が作らせた康煕字典の書体のことである。
漢代以降の歴代の字書の集大成として編纂したという大事業。
全42巻に収録文字数49,030の字典は、部首別漢字辞典の規範となっている。
現代はコンピュータの標準漢字コードの配列順にも使われているという。
よく分からんがあの、ユニコードってやつである。

書体も常に、往き過ぎれば戻り、また先へ進みと状況に応じて動き続ける。そんな流れができている。








投稿日 2012年05月11日 13:20:52
最終更新日 2012年05月11日 13:24:46
修正